2007-12-01

恐竜化石の発見相次ぐ (協力:地学研究部 真鍋真・加瀬友喜)

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 これまでの約30年間の日本の恐竜研究の中で,特に多くの化石が発見されているのが石川県・富山県・福井県・岐阜県に分布する手取層群です。手取層群は今からおよそ約1億8000万年〜約1億2000万年前,中生代ジュラ紀中期から白亜紀前期にかけて堆積した地層で,恐竜の他にも魚類、爬虫類、貝や植物など,豊富な化石を含んでいます。(※3)


 1999年,福井県和泉村(現在は大野市の一部)の手取層群から発見された1本の恐竜の歯の化石が論文に発表されました。断面がアルファベットのDのような形をした左右対称の歯で,大きさは高さ11.0mm,幅4.5mmの小さなものでしたが,D型の断面はティラノサウルス類の上顎の先端付近の歯でしか確認されておらず,この歯もティラノサウルスの仲間のものと分類することができました。その後、同様な化石が石川県白峰村(現在は白山市の一部)からも発見されました。
 ティラノサウルス類は,白亜紀の終わりに北米大陸に生息していたティラノサウルスを代表とするグループで,同じく北アメリカのアルバートサウルス,モンゴルのタルボサウルスなどの大型肉食恐竜を含む,白亜紀後期を代表する恐竜グループのひとつです(※4)。
 手取層群の歯の発見まで,このグループに属する最も古い化石は白亜紀後期から発見されたものでした。手取層群から発見された歯からは,ティラノサウルス類がこれまで考えられていたよりも古い時代,白亜紀前期から既に存在していたことが示唆されました。手取層群からの報告の後,中国・遼寧省の同じく白亜紀前期の地層,熱河層群からもティラノサウルス類に属するディロングの化石が発見され,ティラノサウルス類が白亜紀前期,或いはそれ以前にアジアに棲息し,既に独自の進化を始めていたことが確かになりました。
 白亜紀後期の初めにはアジア・北米両大陸が陸橋で繋がりました。この時期にティラノサウルス類は,北米大陸に渡っていったと考えられています。


※3 日本海が出来て日本列島が誕生したのは新生代のことなので(日本館3階「日本列島の生い立ち」参照),中生代の日本はまだアジア大陸の一部でした。大陸縁の気候は高緯度地域では温暖で湿潤,低緯度地域ではより高温で乾燥していたと考えられ,手取層群からは高緯度型の植物化石が見つかっています。
※4 ティラノサウルス類はかつてはアロサウルスなどジュラ紀の大型の肉食恐竜と同じカルノサウルス類に分類されていましたが,いまでは、小型の獣脚類のコエルロサウルス類に含まれると考えられています。コエルロサウルス類の中では、小型で飛行能力を得て鳥類に続いたものがいた一方で、ティラノサウルス類のように大型化したものがいたことになります。

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