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光による絵画の分析
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五姓田芳柳像

東京藝術大学大学美術館蔵

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五姓田 義松  1880(明治13)年

 五姓田義松は、芳柳の次男として1855(安政2)年生まれ、チャールズ・ワーグマンについて洋画を学び、明治天皇の北陸・東海行幸に御用画家として随行している。1880(明治13)年にはパリに留学している。

 鉛白と白亜による地塗りが三層重なっている。上層になるにしたがって、鉛白の分量比が増加している。下層の橙色の粒は酸化鉄である(断層写真)。

 鉛筆による下素描があるが、芳柳像とは直接関係していない線が目立つ。画面を細かく区分し、それぞれの赤外線テレビ画像写真を作成し、合成してみると、右向きの若い娘の着物姿が現れてきた(赤外線テレビ画像合成写真)。芳柳像とほぼ同寸であり、芳柳の左目と娘の右目が重なる。

 一方、芳柳像も鉛筆による下素描がある。背景は黄褐色、人物は赤褐色、着物は暗緑色と使い分けながら、描き始めている。剛毛の平筆、丸筆を使い分け、腕の振りを利用し、一気に描き進めている。次に、鉛白と土性顔料を混色し、明部を描き込んでいく。紋付きの明部にも鉛白が混ぜられている。その際、樹脂成分を含む絵具を使用しているように思われる。

 左上に赤褐色で「明治十三年六月 五姓田義松写」と、年紀署名あり。


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