一般に標本とは、私たちが知識・情報を得ようとしている対象の全体から、一部分を抽出したもののことで、自然史分野では採集した個体もしくはその一部を、保存可能な状態に加工したものを指します。自然史研究では、動物・植物はもちろん化石や岩石・鉱物など自然界に存在するあらゆるものを対象としています。これらの対象物は、空間的および時間的に異なる様相を示すため(同じ種類でも、異なる場所・時間に採集されたものは同じではない)、ただ収集して保存すればよいというわけではなく、いつどこで採集されたのかという「採集データ」が重要となります。これを失うと、採集物の客観的な性質を把握できず、標本の価値が下がってしまいます。
標本には、その対象物ごとに適したさまざまな保存方法があります。たとえば植物では形を残すために紙に挟み乾燥させた「押し葉標本」、昆虫では足や翅を広げたり、三角紙に包んで乾燥させる「乾燥標本」、魚類や頭足類などはホルマリンやアルコールなどの固定液に浸けた「液浸標本」、哺乳類では「毛皮標本」・「剥製標本」・「骨格標本」、微生物ではプレパラートに封入固定する場合もあります。