ダム湖の植物プランクトン

ダム湖の植物プランクトン

簡易同定チェックリスト

国立科学博物館 植物研究部 | 辻彰洋・新山優子

2022. 03. 22 Ver. 5.01
更新内容

 河川水辺の国勢調査における植物プランクトンの生物リストは、調査開始当初に整理したリストを基本としており、新規出現種の追加や種名の変更に際しては、 上位分類群に矛盾が生じないような形で更新を継続してきました。

 しかしながら、電子顕微鏡を用いた詳細な形態観察、生活史の解明、遺伝子解析などを含む分類学的検討が進んだことで、 従来の生物リストの上位分類群では対応しきれなくなってきています。そこで、最近の分類学的検討を反映させた形で植物プランクトンリストの改訂を行いました。

 今回の改訂は、GenBank に基づき、主に上位分類群の改訂を行いました。これに伴い、グループ(種群)も一部修正しています。 このほか、国立科学博物館ホームページの各種の概説等を参考に同定を行ってください。

このページの使用について

このページは、ダム湖のモニタリングにおいて将来的に電子化した拘束力のあるものとして利用されることを目的として作成しました。

そのため、このチェックリストの種あるいは種群は、様々な処理や生活環の観察を行わず、乾燥系の40倍の対物レンズを用いた光学顕微鏡観察で同定可能なレベルにとどめています。

その意味で、このチェックリストは最低限を規定する簡易同定チェックリストであり、実際のモニタリングにおいては、可能であれば更に高いレベルでの同定を行っていただきたく思っています。 また、このチェックリストはダム湖の日常的な維持管理を目的としたものであり、研究目的・生物多様性のモニタリングや上下水道の管理などの目的のためには不十分です。

このホームページのグループ(種群)はダム湖で優占する種について精度を求め、説明も丁寧にしています。一方、流入水からの混入の可能性が高い付着性珪藻など、ダム湖プランクトンモニタリングでの重要性の低いものについては、同定レベルを落とし、属単位あるいは複数の属を入れたグループとしています。このレベルでは付着性珪藻を対象とするモニタリングに使えないのは明らかです。また、自然湖沼では、ダム湖に比べて多様な種が優占・出現します。そのため、自然湖沼を対象としたモニタリングでは参考にすることはできますが、チェックリストとしては不十分だと思います。

小形単細胞鞭毛藻類の取り扱いについて

小形の単細胞鞭毛藻類等については、現存量は多いが、従来のアセスメントでは、見落とされているケースが多いと思われます。これらの同定には、生細胞を観察するほか、グルタルアルデヒド固定等を行い、染色をして高倍で観察する必要があるなど、現実的に難しい問題があります。また、正確な計数のためには沈殿法でも細胞を流出しないよう細心の注意が必要です。 そのため、今回のチェックリストではこれらについては、大きくまとめることにしました。この件の可否については多くの方にご意見を頂きたく思います。


謝辞

本研究の一部は、水源池生態研究会の研究の一環として行ないました。

この研究に関して一般財団法人水源地環境センターからの助成金および、JSPS科研費 23510021の助成を受けました。
厚く御礼申し上げます。

このHP作成は国立科学博物館の情報公開促進経費により行いました。


更新履歴

2021.03.22 v.5.01 公開

2021.06.18 v.4.02 下記2つの種名のスペルミス修正を行った。

  • 206-1 (誤)Akanthospaera-Golenikinia-Golenkiniopsis属 → (正)Acanthosphaera-Golenikinia-Golenkiniopsis属
  • 207-3 (誤)Kirchineriella属 → (正)Kirchneriella属

2021.04.21 v.4.01 簡易同定チェックリストの「その他」の項目追加および「プセウドアナベナ科」の詳細情報追記を行った。

2018.01.29 v.3.0 簡易同定チェックリストの「その他」の項目追加および「401-8 Lindavia属」の属名更新を行った。

2014.05.07 v.2.0 フィードバックを元に項目の全面的な見直しを行った。そのため、コードも振り替えを行った。

2013.05.10 v1.1 本番移行バージョン2 文字化けの解決と共に一部グループの再統合を行った。

2013.04.01 v.1.0 本番移行バージョン1 大幅にグループの統合を行った。

2012.04 v.0.1 仮バージョン公開


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