2023-01-26

最新研究が明らかにした日本列島の小型サンショウウオの多様性


(3)ハコネサンショウウオの予想外の多様性 −1種から7種へ−

図3.2022年現在の日本産ハコネサンショウウオ属7種の系統関係の概略(左上)とその分布図(右上)。かつてはこれらすべての種が(広義の)ハコネサンショウウオとされていた。(左下)タダミハコネサンショウウオO. fuscus、(右下)ホムラハコネサンショウウオ、両種とも狭義のハコネサンショウウオと分布が重なるが、種間交雑はほとんど起こらない。

ハコネサンショウウオ属Onychodactylusは尾が長い細長い体型のサンショウウオで、指先に黒爪をもつち、成体でも肺がなく皮膚呼吸のみをおこなうなどの特徴をもつグループです。ハコネサンショウウオは国内には長い間1種だけが分布すると考えられてきましたが、私は大学院時代から本種の分類学的再検討に取り組み、遺伝子解析や外部形態比較に基づく研究を進めてきました。その結果、2012年以降に私たちや他の研究グループの成果によって新種記載が進みました。2022年には日本産で7種目となるホムラハコネサンショウウオO. pyrrhonotusを新種として発表しています。
ハコネサンショウウオ属の場合、各地域個体群が切り分けられるように別種となる一方で、狭義のハコネサンショウウオといくつかの種では分布が重なり、2種類が同じ場所で共存しながら種としての独自性を保っている例も明らかになっています。1種と思われていたハコネサンショウウオの内部に、予想外の種の多様性ときわめて興味深い種間関係がみられたのです。