2011-04-20
日本で起こる地震
津波
■海底の変形=津波の原因
一般的な津波は、断層の活動で海底が盛り上がる(または陥没する)動きが海面に伝わる事によって起こります。逆に言うと、いくら大きな地震が起きても、海底の変形が起きなければ津波は起きません。また、地震以外の津波の原因として、巨大隕石の衝突や、地滑り・山体崩壊によって起こるものもあるとされます。地震による津波に関する記録として、津波の様子を描いた絵もあります。
■津波の速さ
よくニュースで「津波は速い」と言われますが、津波の速さは物理学的には「重力加速度と水深の積の平方根」で現されます。具体的には、平均水深5000 mの太平洋では
(9.8[m/s/s]×5000 [m])^(1/2) = 221.4 [m/s] = 796.9 [km/s]
となり、時速約800キロと、ジェット旅客機に匹敵する速さになります。1960年にチリで起こった地震による津波は、一晩で太平洋を横断し、日本にも被害を及ぼしました。今回の津波もハワイやアメリカ西海岸に到達したことが報道されました。
■津波の高さ
「そんな津波が太平洋を渡ったら、太平洋上の船は大変ではないか」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。外洋での津波は非常に波長が長い波になり高さもなだらかになります。もし津波が通過したとしてもほとんど感じられないくらいです。しかし、そんな津波が沿岸部の水深の浅い所になると、急激に高さを増します。例えば水深50 mを上記の式に当てはめてみると、津波の速さは1/10の79.6[km/s]になり、津波のエネルギーが「渋滞」を起こした結果として高い波になります。
また、湾の形は大きな影響があります。「湾口が広く奥が狭い湾」は、広い湾口から入った津波のエネルギーが奥に行くに従って集中し、高い津波になります。リアス式海岸の湾などはこの典型です。逆に、「湾口が狭く奥が広い湾」は湾口から入った津波のエネルギーが奥で拡散するために、津波の被害を受けにくいと言われます。東京湾などがその典型です。
■津波の影響
今回の地震では、多くの建物が津波で持ち去られ、被害を受けた町は、以前とは全く異なる面影となってしまいました。津波のエネルギーは大変大きな物だったことが伺えます。
初めの章でも記述しましたが、今回の震災により、数十年〜数百年レベルの周期の地震の予知では不十分で、千年単位の周期で起こる巨大地震を予知するためには、古文書を超える古い「記録」を読み解く事が不可欠であると言えるでしょう。そしてその地震に伴った津波などの現象の情報をより検討する必要があるでしょう。
今後、地質学、地震学、防災学などの手法を取り入れながら、過去の巨大地震を捉え、今後の予知や防災に役立てようとする動きが活発になるであろうと思います。
監修・協力 地学研究部 堤 之恭