2014-07-16

「発見する眼」を次の世代へ −標本図の技術を伝える筑波実験植物園の取り組み

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※この記事は以下のページで構成されています。ご覧ください。
はじめに
標本図はなぜ必要か
標本図ができるまで
より正確に,より多くの人に −標本図の過去,現在,未来

標本図ができるまで

左:多数のスケッチから目的に合うものを選び、レイアウトを決める 右:電熱器で標本を煮戻す。押し葉標本の花は生きていたときの形を取り戻す


 ではどのように標本図は作られるのでしょうか?美術作品との大きな違いは,研究者と画家が共同で制作するところです。植物のどの部分をどの視点から描くか,どこをどのくらいの倍率で見せたいかといった注文を研究者が出し,画家は実体顕微鏡で観察しながらスケッチします。スケッチした下描きを使って研究者と画家は意見を交わし,研究者の意図が十分に伝わるまで改訂を繰り返すこともしばしばです。そして数多くの下描きの中から目的に合うものを選んでレイアウトし,インクで輪郭と陰影をつけていきます。ここでもなんどか修正を施されることがふつうです。論文に使う1枚の図ができるまでには,たいへんな手間がかかっていることがお分かりいただけたでしょうか?
 また標本から図を作るには,さまざまなノウハウがあります。たとえば,押し葉標本はその名の通りつぶれているため,花の立体構造が失われています。こうした場合,ビーカーに乾燥した花と水を入れ,電熱器や電子レンジを使って温めるともとの形がよみがえり,生きていたときの姿を描くことができます。
 残念なことにこうした技術を学ぶ場が日本にはありませんでした。このことが標本図の技術の継承をあやうくしている原因に他なりません。


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