2012-08-19

夏休みの自由研究で守られた貴重なマリモ − 絶滅危惧の山中湖フジマリモ


夏休みの自由研究で守られたフジマリモ!

 フジマリモは、発見当時には山中湖の湖岸に多く生息しており、住民の多くはそのマリモの存在について知っていましたが、あまり注目されてはいませんでした。

 東京都にお住まいの亀田良成さんは、昭和31年から33年頃(天然記念物の指定前)に山中湖を家族旅行で滞在中に杉浦校長が書かれたフジマリモについての資料を読んで興味を持ち、フジマリモを採集しました。
 このフジマリモの生育記録を中心に、小学5年生であった昭和33年の夏休みの自由研究として、「山中湖の研究」という題でまとめて、学校に提出しました。その研究材料のフジマリモは、それから56年間にわたって家族で大切に育てられました。

■「貴重なマリモなのでは・・」
 亀田さんはフジマリモが現在のような絶滅危惧状態にあることを偶然インタネットで知り、育ててきたマリモが貴重な存在であることに気がつき、どうすれば良いのかについて山登りの友人に相談しました。その友人の紹介により、昨年(2011年6月)に亀田さんから育ててきたフジマリモの保存について、国立科学博物館・植物研究部研究主幹の辻彰洋先生に相談がありました。

 国立科学博物館では、この亀田さんのマリモについて顕微鏡による形態観察と、遺伝子解析を行いました。その結果、これがマリモを含むシオグサ科の葉緑体や分枝の特徴を持っており、遺伝的に立山のタテヤママリモに近縁で、よく知られている阿寒湖や釧路湿原の「マリモ」とは遺伝的に異なること、そして、亀田さんが他の湖や川から水生生物を持ち込んだ記録がないことから他の種類のマリモが入っていないことが確認でき、この亀田さんのマリモが「山中湖由来のマリモ」であることが確認されました。

 この亀田さんに長い間育てられていた貴重なマリモを国立科学博物館の筑波実験植物園の平成23年度企画展:水草展で、生きたまま展示することになりました。そして、これまでそのマリモが守られてきた経緯を紹介ことも含め、プレスリリースされ、多くのメディアに注目されることになりました。