2009-05-01

速報:新型インフルエンザ,侵入に注意


新型インフルエンザとは?(2)

 新しいタイプのインフルエンザの登場がほぼ確実となってきた今,次に問題となってくるのはその毒力です。今回の新型インフルエンザのウィルスは,人間にとってどの程度危険なものなのでしょうか?

 国立感染症研究所インフルエンザ研究センターのセンター長,田代真人氏(WHO緊急委員会委員)は28日記者会見し,今回のウィルスは弱毒性であるとの認識を示しました。
 細胞に対するウィルスの感染に関わる糖タンパク質,ヘマグルチニン(HA)の遺伝子解析からわかったものです。

 弱毒性とは感染が肺などの呼吸器にとどまるもので,新型が誕生する前の豚インフルエンザは元々弱毒性として知られていました。毎年のように流行している一般的なインフルエンザも弱毒性です。
 一方強毒性インフルエンザは,呼吸器以外の器官,脳などにも感染します。全身感染そのものが危険であることも勿論ですが,免疫機構に対する強い刺激が継続することになるため,免疫の制御が失われ,アレルギーに似た過剰反応を起こす場合があります。呼吸困難や多臓器不全など,致死的な全身反応に繋がることもあります。1918年から1919年に掛けてのインフルエンザ(スペイン風邪 ※)の大流行の際,本来ならば免疫力が高く重症化しにくい筈の若者の死者が多かったのは,高い免疫力が却って仇となり,過剰反応が起きるケースが多かったためとする説もあります。

 今回のウィルスは幸い,弱毒性とわかりました。しかしまだ,安心できる状況とは全く言えません。例年流行するインフルエンザと毒性が大きく変わらない場合でも,私たちがこれまで経験したことのないウィルスであれば,免疫がないため重症化する可能性が高くなります。1957年に流行した「アジア風邪」では全世界で約200万人,日本だけでも7,000人以上の方が亡くなっています。

 更に,A型のインフルエンザウィルスは変異を起こしやすいため,ヒトからヒトへと感染していく中で強毒性に変わる可能性も否定できません。

 ヒト−ヒト間の感染がこの先も広がって行くのか,患者の予後はどうなのか…引き続き予断を許さない状況であることには変わりありません。

※「スペイン風邪」は1918年早春にアメリカで発生し,その後フランス,スペイン,イギリスへと拡大しました。日本で流行が始まったのは1918年5月頃のことです。18年,19年の2年間で,当時の地球人口の約半数が感染,亡くなった方は4000万人以上(日本だけでも38万人)にも達しました。元々は弱毒性だったウィルスが,ヒト同士で感染していくうちに強毒性に変異したと考えられています。
(『世界大百科事典』 平凡社 1988年,厚生労働省HPによる)