2008-08-20

ゲリラ豪雨と積乱雲−突然の雨・雷に注意!− (協力:理工学研究部 前島正裕)

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※この記事は以下のページで構成されています。ご覧ください。
異常に高かった雷雨率
積乱雲の発達と落雷・降雨のメカニズム
急激な気象変化への備え
積乱雲を追跡する

積乱雲の発達と落雷・降雨のメカニズム

 雷の元になる雷雲はどうしてできるのでしょう。
海上や地上が温められることで発生する水蒸気を含んだ上昇気流は,高度上がると次第に温度が下がっていきます。
 空気中に含まれることのできる水蒸気の量は温度で決まっており,温度が下がると水蒸気は凝結して小さな水滴になります。更に上昇すると水滴は凍って,小さな氷の粒になります。これらの水滴・氷粒の集まりが雲です。
 雲のでき始める高度は湿度が高いほど低く,また雲の高さは上昇気流の規模が大きいほど高くなります。地上付近のごく低層から,1万メートルを超える高度にまで立ち上る縦長の積乱雲は,日本の夏にしばしば見られる代表的な雷雲です。

 水や氷の粒は雲の上層で周囲の水蒸気を吸収して成長し,次第に大きく,重くなります。そして重力の影響により下層へと落ち始めます。この時粒は摩擦によって周囲の空気を引きずり下ろし,積乱雲の内側で下降気流を発生させます。
 しかし下層からの上層気流も依然存在しているため,下へ落ちていく成長した水や氷の粒と上昇してきた小さな粒がぶつかり,その摩擦により静電気が起きます。上昇していく水や氷の粒はプラスの,落ちていく粒はマイナスの電荷を帯びるようになるのです。そして衝突が繰り返されると,やがて雲全体が,上部はプラス,下部はマイナスにそれぞれ帯電するようになります。そして雲の下部がマイナスに傾くとその影響で,雲から遠くない地面にはプラスの電荷が誘導されます。
 プラスの電荷とマイナスの電荷は互いに引き合っていますが,一般的に空気は絶縁性が高いので,ある程度までなら帯電したままの状態が維持されます。しかしあまりにも電荷の蓄積が大きくなると,空気の絶縁が敗れて、大きな雷鳴とともに放電します。雲の中どうしでも放電しますが、地上に放電するものを落雷と呼んでいます。

 では積乱雲ができやすい大気の状態とはどのようなものでしょうか?
気象情報で雷の予報と共に良く聞くのは,『大気の状態が不安定』になっている,ということばです。大気の熱対流が起こりやすく,上昇気流が生まれやすい状態のことです。
 通常大気は,高度が上がるほど気温と気圧が下がります。下層で温められた空気は次第に上昇しますが,同時に気圧も高度に応じて下がっていきます。気圧が下がると気体の温度は低下するため,ある高度まで上昇したところで上って来た空気と周りの温度は同じになります。こうなればそれ以上の空気の上昇は起こらず,大きな対流は発生しません。
 しかし,下層に特に温かい空気が入り込んでいると,先程と同じ高度まで空気が上昇しても未だ周囲より温度が高い状態になります。その為空気の上昇が続き,対流が起こりやすくなります。これが『不安定』な状態で,上空に寒気が入り込んでいる場合も同じことが起こります。
 大気が不安定な状態が続くと,温められた空気の上昇が止まらないため,上昇気流が発生し積乱雲が発達しやすい状態になります。

※ここでは主に太平洋側で夏の夕方に多く見られる,積乱雲を原因とする雷の発生メカニズムを紹介しました。


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