2008-07-01

特定外来生物セアカゴケグモ (協力:動物研究部 小野展嗣)

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セアカゴケグモ,多数発見
セアカゴケグモの生態
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特定外来生物とは

セアカゴケグモの生態

 セアカゴケグモ(Latrodectus hasseltii)はヒメグモ科ゴケグモ属に属し,オーストラリア・南太平洋・東南アジアなどの熱帯・亜熱帯域に生息しています。脚を除いた体長はオスが3ミリ,メスでも10〜14ミリと小型ですが,背赤というその名前のとおり,腹部の背面に赤またはオレンジのひし形をふたつ並べたような特徴的な模様(通常見えませんが腹面にも赤い模様があります)が人目をひきます。

 セアカゴケグモの「巣」は私たちが普段住居内などで見慣れたような,円形ではありません。セアカゴケグモを含めゴケグモ科のクモは地面の割れ目や岩の間,下草や低木の枝葉の間などに,不規則な形の網を張りますが,その網には自分の体がちょうど収まる程度の大きさの,コップを逆さまにしたような形の住居がついており,クモは通常そこに隠れています。そして網から地面にむかって,まるで釣り糸を垂らすように,捕虫用の糸を垂らしています。捕虫糸は地面に近い部分のみねばねばになっており,地面を這う虫がそれに触れてくっつくと,クモはそれを釣り上げて食べます。飛行性の昆虫であっても糸につけば食べますし,人間の手がねばねばの部分を触れば餌と間違えて咬みついてくることがあります。
 人間の生活圏内で彼らが好むのは,今回三川公園で発見されたような側溝の蓋の裏,ベンチの後ろ,墓石の間など,このような形の「巣」を張り易い場所です。
夜行性で,森林よりも夜まで明かりがついており虫が集まり易い所為なのか,都市環境を好むようでもあります。

 地面から比較的近い所に,「巣」を張り易い覆い状のものが被さっている,という形を考えてみると,自動車の車体下も当てはまります。
 クモの仲間の多くは糸を風に乗せ,それと一緒に空を飛ぶ「バルーニング」と呼ばれる方法で分布を拡大します。しかしセアカゴケグモではこれまでのところ,バルーニングの習性は確認されていません。その代わり,自動車の下などにくっついて人間と一緒に,人知れず移動している可能性があります。
 人工物を嫌がらないこともあり,港湾地帯から多くの自動車が内陸へ人や貨物を運んでいることを思えば,今回のような侵入・拡大はそれほど驚くことではないのかも知れません。


図:セアカゴケグモとその網
右上部分が住居。捕虫糸の下の方(矢印部分)のみ粘液がついている。
(東海大学出版会:小野展嗣著『クモ学−摩訶不思議な八本足の世界』より転載)


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