動物の顔の特徴

 進化の道筋にそって実際の祖先の顔を見せることができれば一番よいのだが、それは現時点ではかなわぬことなので、それらに近縁と考えられている現生の動物の顔をいくつか紹介しよう。  

 ナメクジウオ

 脊椎動物全体の祖先候補としてしばしば挙げられるのは、体の中軸に寒天質の脊索という支持器官をもつ原索動物である。脊椎動物でも個体発生のある時期には椎骨の前身として必ず脊索が現れるので、両者は近縁ということになっている。ここでは原索動物の代表としてナメクジウオを紹介しておこう。ナメクジウオは浅海にすむ、体長2〜6cmの、骨も鱗もない、半透明で頭と胴の区別がない生きものである。口は触手に囲まれ、対性の視覚器や聴覚器はもたない。呼吸はエラで行う。
 ちなみに、現実に知られている最古の脊椎動物は、5億2000万年以上前、カンブリア紀後期の無鰐類(表1)である。無鰐類には少なくとも単なる孔のような口と目が二つ、鼻孔が一つあった。餌を捕獲したり噛むための顎や歯はまだない。


展示標本


顔(イラスト・石井礼子)


生態(撮影・楚山勇)