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白色光線が物体に当たると、乱反射せずに、正反射することがある。鏡面反射ともいい、光源そのものが反射して見える。この正反射の現象を絵画に導入している場合がある。金箔を画面に貼り、平滑に磨いて、あたかも画面から光が発しているかのように見せる方法である。西洋画においては、聖像画(イコン)に多い方法である。初期ルネッサンス絵画における聖母子像など、人物の背景に金箔が貼りこめられ、神の象徴として光輪が彫り込まれる。正面から見ると、あたかも画面から後光が放射しているように見える。
盛期ルネッサンスをへてバロックにかけて、絵画は正反射を利用する金箔による背景がなくなり、「聖なる世界」の表現から、現実の視覚を重視する「俗なる世界」へと踏み込んでいく。その結果、遠近法と明暗法が展開する。物自体の量感(ボリューム)を出すために、光が当たっている明部と当たっていない陰影部を描き、さらには物自体を取り囲んでいる空間そのものを明暗法で描き出そうとしている。いいかえれば、光を画家みずからが画面の中で創造しているのである。
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