HOME > 光とアート

光による絵画の分析
前へ
 4/6
次へ
----------------------------------------

横向婦人

東京藝術大学大学美術館蔵

  写真を拡大する

原 撫松  1907(明治40)年

 原撫松は、1866(慶応2)年に岡山に生まれ、1880(明治13)年京都府画学校西宗科に入学。1904(明治37)年にイギリスに留学し、レンブラントなどの模写に励み、1907(明治40)年に帰国している。

 画面側面のクロスセクションを観察すると、何層もの重層構造が成立している(断層写真)。市販画布への執拗な地塗り下塗りへのこだわりは単に色調の問題にとどまらず、画面表面の肌理への興味が感じられる。もちろん、八層までの絵具の重なりは構図の変更によって生じた結果であろう。

 明暗の諧調を鉛白の下層描きの層の厚さに置き換えて、大胆に筆触を効かせて塗っている。X線写真から、陰影部もしくは横顔の輪郭にあたる部分にはほとんど鉛白が使用されていないことがわかる。さらに、注意深く観察してみると、当初この女性はヴァイオリンを弾くポーズをしていたものと思われる。肩の位置も画面中央寄りにあったことが判明する。枠取りをして、画面を小さくした時に、ヴァイオリンを取り除き、女性の横顔だけをそのまま生かし、肩の位置も変えたのであろう。

 衣服部分は、鉛白による厚塗りの上に、比較的薄層に鼠色が塗られ、青色や赤色が混ぜられた白色も塗られ、仕上げられている。背景と衣服部分は、比較的強引な筆触であるが、横顔の部分は丁寧に仕上げられている。

 この作品は、新聞紙で梱包されたことがあり、その際英字活字部分が転写されたように画面下辺右端に付着している。


ページの先頭へ
----------------------------------------

前へ
 4/6
次へ

Copyright(C)2003
National Science Museum, Tokyo
All Rights Reserved.