世界初!光合成をする植物としない植物の雑種が開花

産業技術史
Tomohisa Yukawa

遊川 知久(ゆかわ ともひさ)
筑波実験植物園

雑種世界で初めて開花した、光合成する植物と光合成しない植物の雑種。寒天培地に入れて培養中。高さ約10cm
雑種_父雑種の父親、マヤラン。葉がなく、ほとんど光合成しない
雑種_母雑種の母親、スルガラン。葉をつけ、正常に光合成をおこなう

光合成する植物と光合成しない植物の雑種の開花に、世界で初めて成功しました。咲いた植物はランの仲間で、葉をつけて光合成をお こなうスルガラン(Cymbidium ensifolium)と葉がなく光合成をおこなわないマヤラン (Cymbidium macrorhizon)の雑種です。 2006年8月に交配。栄養の入った寒天培地で 播種・培養し、6年後の2012年にようやく開花しました。この植物が正常な光合成をおこなうかどうかはまだ分かりません。

ふつう植物は葉で光合成をおこない、生きていくための栄養を作ります。ところが、マヤラ ンのように光合成をやめて葉を作らない、世にも奇妙な植物がまれにあるのです。共生する菌類から栄養や水をもらってのんきに暮らしています。こうした光合成しない植物がどのような 道すじをたどって進化したのか、これまでまっ たく分かっていません。この謎を解き明かす有力 な方法が、雑種とその子孫を育てて、個体ごとの性質と遺伝子の関連を調べることです。
今回の成功をきっかけに、光合成をやめるという奇妙な進化の解明が進むことが期待されま す。また植物が菌をたくみに利用して栄養を奪い取る仕組みが分かれば、光合成に適さない暗い場所での農業に役立つ可能性もあります。

研究員に聞いてみました!

遊川博士
1)専門は何ですか?

植物の分類と進化です。

2)研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?

小さいころ植物園で遊ぶうちに・・・。

3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?

筑波実験植物園で世界一大きい花(ショクダイオオコンニャク)が咲いたときに、花から煙が出たこと。

4)研究者になりたい方に一言アドバイスを !

ほんとうに好きなこと、興味のあることをいとおしんでください。