過去の地震を波形記録から解き明かす

生命史
Satoko Murotani

室谷 智子(むろたに さとこ)
理学研究部
理化学グループ

地震計
~波は地下からのメッセンジャー?!~

昔々、 地震は地面の下の大なまずが暴れることよって引き起こされていると考えられていました。でも今、私たちは地下の断層がずれることによって地震が起こるということを知っており、その断層がどのように動いたのかを、地震波形や津波波形から明らかにすることができます。地震によって、 観測する場所によって、波形の姿は異なります。 様々な情報が隠されている波形記録は、直接地震が起きている地下の状態を視ることができない私たちに、とても重要なメッセージを与えてくれます。現在は地震や津波の観測機器も高精度化し、デジタルデータを簡単に収集・利用することができますが、1980年頃までは科博に展示してあるような地震計によって、紙に記録されていました。私は主に、まだアナログな時代の地震の解析を行っています。現在と違って観測点の数はそれほど多くはありませんし、解析に必要な情報が不明なことも多いです。それでも探偵さながら、コツコツと数少ない情報から地震像を解き明かすことに挑戦しています。 過 去にどこでどのような地震が起こったのかを調べることは、 将来必ずや私たちが遭遇するであろう地震や津波に対する防 災・減災対策につながります。そのためにも、重要な過去の記録や地震計を未来に残していきたいと思います。

断層面
地震動軌跡模型日本館1階南翼に展示中の関谷清景による地震動軌跡模型

研究者に聞いてみました!

1) 専門は何ですか 

「地震学」です。最近起きた地震だけでなく、 明治から昭和中頃の過去の観測記録を使ってどのような地震が起きたのかを調べたり、たくさんの解析事例を集めて特性を調べたりしています。

 2)自身の研究内容と社会、一般との接点は

日本は災害大国です。自分の研究成果が防災対策などに使われることがあります。過去にどこでどのような地震が起きたのかを知ることは、将来発生する地震への知識や備えとして重要です。ディスカバリートークでも、過去の地震についてお話ししています。

3)研究する上での苦労や悩みなどはありま すか 

大きな地震が起きて甚大な被害が生じると、まだまだ私たちの力不足を感じます。また、大地震の発生は地震学者にとって貴重なデータを得られることにはなりますが、その一方で甚大な被害が生じている場合もあり、複雑な気持ちです。

4)研究以外の趣味や熱中していることはありますか

高校からオーボエを始め、吹奏楽やオーケ ストラ活動をしていますが、最近は楽器を吹く余裕がなくなってしまいました。でもまた復帰したいです。