鉱物の結晶構造を調べる

門馬 綱一(もんま こういち)
理学研究部
鉱物化学研究グループ
私たちが住む大地は、岩石、すなわち鉱物の集合体によって構成されています。これまでに発見されている鉱物種は約5400種類で、その数はここ数年、毎年100種類以上増え続けています。動植物に比べれば絶対数は遥かに少ないですが、5年で約1割も鉱物種が増えていることは、相当なペースです。それら一つ一つの鉱物は、特定の条件が揃わないと形成されないので、新種が次々と発見されるということは、我々の知らなかった地質条件が次々と発見されているとも言えます。
鉱物の種類はその化学成分と結晶構造(原子配列)によって定義され、そのどちらかが既知の鉱物と異なれば新種として認められます。しかし、性質の似た元素は互いに任意の割合で入れ替わることがあり、既存種と新種の中間的な成分を持つ鉱物はいくらでも存在します。これらは各標本の個性のようなもので独立種とはみなしません。
ある鉱物標本が「中間的な成分の既存種」なのか「新種」に相当するのかについては、結晶構造の精密な解析を行わなければ判別できないことも多く、その解析に取り組んでいます。
図1 伊予石(左)と三崎石(右)の結晶構造図。
各球は銅(青)、マンガン(紫)、塩素(緑)、酸素(赤)、水素(ピンク)を表す。
写真1 2017年に記載された伊予石(緑色針状の結晶)と三崎石(緑色六角板状の結晶)。結晶構造解析により、マンガンと銅が規則正しく交互に配列した鉱物であることが明らかになった。
写真2 レアメタルの一種、インジウムを主成分に含む櫻井鉱(黒線で示した灰黒色の脈)。兵庫県の生野鉱山で 発見され、1965年に新鉱物として記載されたが、理想化学組成について決着がついていなかったため、結晶構造解析に取り組んでいる。
写真3 静岡県河津鉱山から発見された欽一石。レアメタルのテルルを含み、櫻井欽一博士にちなんで名付けられた。研究者に聞いてみました!

1) 専門は何ですか
鉱物の原子配列や、鉱物ができる過程などについて研究しています。
2)やりがいを感じるのはどのような時ですか
新種や、構造が解かれていなかった鉱物の原子配列を決定できた時は、難しいパズル を解いたような感覚で、とても気持ちが良いです。
3)研究以外の趣味や熱中していることはありますか
美しい景色をボーッと眺めたり、写真を撮ることが好きです。
4)今の職業に就いていなければ何をしてい ると思いますか
小学生の頃は物を作るのが好きで大工になるのが夢でした。大学に入ってからはソフトウェア開発にも熱中していたので、ソフトウ ェア開発のエンジニアになっていたかもしれません。