冥王代の「生き証人」を探す

堤 之恭(つつみ ゆきやす)
理学研究部
鉱物科学研究グループ
地球の歴史は約46億年前に始まりましたが、約40億年前までは地質学的な証拠が全くなく、その地質時代は「冥王代」と非公式ながら呼ばれてきました。しかし近年、たとえ岩石が溶けても残る場合がある非常に強靭なジルコンという鉱物など、冥王代の年代を持つものが発見されています。冥王代のジルコンは、40億年以上前の地球の環境の情報を語ってくれる「生き証人」であり、より多くの冥王代ジルコンを収集するために古い堆積岩を採取しています。
写真1 カナダ中部以北は人口が少なく、道路もあまりない。大小の湖沼が
点在しているので、移動には水上機を用いるのが便利。(カナダ・グレートスレイブ湖)
写真 2 北米大陸は氷河期には大陸氷河におおわれていた。写真の丸い大きな岩は、「迷子石」と呼ばれる、かつて氷河が運んできたもの。鉄塔の上には、オスプレイ(日本名:ミサゴ)の巣がある。(カナダ・マーティン湖)
写真 3 18億年前の地層に残された、さざ波の跡(漣痕)。(カナダ・ウラニウムシティ)
写真 4 取り出したジルコンは、レーザーを当てることで一部溶発させ、簡易分析する。その結果古ければ、取り出して本分析を行う。丸い穴は分析痕。研究者に聞いてみました!

1) 専門は何ですか
岩石や鉱物を分析することで、それらができた年代を調べています。
2)やりがいを感じるのはどのような時ですか
小さなことでも新事実を発見したときです。「これを今知っているのは自分一人だ!」という感覚は、研究者特有だと思います。
3)研究する上での苦労や悩みなどはありますか
調査地の世界遺産、ジオパークや天然記念物登録などは痛し痒しですね。登録自体は喜ばしいことですが、その後の調査が困難になってしまうことがあります。
4)研究する上で一番大事だと思うことは何ですか
成果を公表することです。公表しないことには、自分のデータや解釈が合っているのか評価できないからです。また、公表することで情報が共有され、別の人の新たな発見につながる可能性もあります。