海底火山の活動史や噴火メカニズムを明らかにする

谷 健一郎(たに けんいちろう)
理学研究部
鉱物化学研究グループ
謎が多い海底火山
日本は火山列島として世界的に有名です。しかしながら日本周辺の海の下にも沢山の海底火山が存在し、活発な火山活動が起こっていることはあまり知られていません。 海の下は詳しい地図が存在しない場所がほとんどで、どこに、どんな海底火山が分布しているかもまだよく分かっていないのです。
浅い海での火山噴火では、高温のマグマと海水が接することで爆発的な噴火を起こしたり、あるいは津波を発 生させたりするリスクがあります。最近では2018年12月にインドネシア・スンダ海峡にある火山島が噴火に伴って山体崩壊を起こし、周辺のジャワ島沿岸に突如津波が押し寄せて大きな被害が出ました。
活動的な海底火山の発見:大室ダシ
私は調査船や探査機を使って海底火山の噴出物を採集し、そのマグマがいつ、どのように形成されて、噴火したのかを研究しています。私たちは2012年に伊豆大島南方の大室ダシと呼ばれる大きな高まりが、流紋岩質マグマを噴出する活動的な海底火山で、その噴火口周辺では現在も高温の熱水が噴出しているのを発見しました。それまではこの高まりは波で削られたような平らな山頂を持っていたので、活動が終わってしまった海底火山と考えられていたのです。
活動的と判明した大室ダシ火山の生い立ちを調べるために、9年間かけて大室ダシ全域の海底地図を作成しました。海底の地図は船から音波を出して作るので、膨大な時間と労力を要するのです。しかしその甲斐あって、これまで見つかっていた噴火口以外にも複数の場所で噴火が起こっていた痕跡を見つけることができました。またこの研究で、大室ダシでは今から約1万年前に噴火が起こり、その噴出物が伊豆大島などの周辺の島々にも到達していたことが明らかになりました。
無人探査機を使った大室ダシの海底調査。奥に見えるのが利島。
大室ダシ海底で発見された熱水噴出孔(水深 200m)。200℃以上の熱水が噴き出ている。
伊豆大島南西 の「地層大切面」。大部分は伊豆大島火山の噴出物だが、この中に大室ダシ由来の噴出物が見つかった。研究者に聞いてみました!

1) 専門は何ですか
地質学のなかでも岩石学と年代学という分野が専門です。大陸地殻や火山を作るマグマがいつ、どのようにして出来るのかを研究しています。
2)やりがいを感じるのはどのような時ですか
研究航海では船・探査機チーム・研究者などたくさんの専門家たちと長期間一緒に乗船して調査をします。自然相手の調査なので思い通りに進まないことの方が多いのですが、皆で協力して狙い通りの成果が得られた瞬間はとてもやりがいを感じます。
3)研究以外の趣味や熱中していることはありますか
山登りです。高校時代からずっと続けています。登山中に面白い石を見つけると、ついつい拾ってしまいそうになるのは職業病かもしれません。
4)今の職業に就いていなければ何をしていると思いますか
たぶん登山関係の仕事(山道具屋・山小屋・登山ガイドなど)をやっていたと思います。学生時代は富士山で登山ガイドの仕事をしていました。