火山岩の多様性から地球深部の情報を知る

理学
Takashi Sano

佐野 貴司(さの たかし)
理学研究部長

マグマは地球深部で岩石が融けてできます。地球深部から上昇してきたマグマは、火口から噴火し、地表で固まって火山岩となります。火山岩の組織や化学組成には無数の多様性があり、この多様性を調べることで地球深部の温度、溶ける前の岩石の種類、マグマの上昇速度等、さまざまな情報を知ることができます。火山岩の組織は「斑状」とよばれ、粒の大きな鉱物である「斑晶」と粒の小さな鉱物からなる「石基」からつくられています。

コソン(韓国)の玄武岩コソン(韓国)の玄武岩
富士山の玄武岩富士山の玄武岩
小笠原諸島の無人岩小笠原諸島の無人岩

斑晶は地下でマグマが止まっていた(=マグマ溜まりをつくっていた)とき、温度が冷えてマグマの一部が固まって鉱物となったものです。したがって斑晶を調べるとマグマ溜まりの情報を得ることができます。一方、石基は地下深部でマグマができたときから噴火するまでマグマとして存在した部分です。このため、石基はマグマができた時の情報を保持しています。私は顕微鏡を用いて火山岩の組織を観察するとともに、さまざまな機械を使って火山岩の化学分析を行い、地球深部の情報を引き出す努力をしています。さらにマグマの状態を再現するために、岩石溶融実験も行っています。

走査型電子顕微鏡走査型電子顕微鏡(鉱物の化学分析)
蛍光 X 線分析装置蛍光 X 線分析装置(岩石の化学分析)
岩石溶融実験装置岩石溶融実験装置(1500℃で岩石を溶かす)

研究員に聞いてみました!

佐野博士
1)専門は何ですか?

火山の地質調査と火山岩の実験・化学分析です。最近は海洋底に潜んでいる超巨大火山を対象としています。

2)研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?

国立科学博物館へ就職できたことです。

3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?

海洋底の超巨大火山の岩石を無事採取できたことです。

4)研究者になりたい方に一言アドバイスを !

研究を楽しめると良いですね。