ゲノムで日本人の成り立ちを知る

生命史
Ken-ichi Shinoda

篠田 謙一(しのだ  けんいち)
生命史研究部
名誉研究員

1990年初頭に化石に残るDNAの解析が可能になり、直接古代人の遺伝情報を得ることができるようになりまし た。それを契機として、私も縄文人や弥生人といった日本の古人骨のDNA研究を始めました。その後、中国や台湾、東 南アジアでも古代のDNA分析を進めて、日本人の成り立ちについて考えてきました。また、南イリノイ大学の島田泉教 授の発掘チームに参加し、南米アンデス地域でのDNA研究も続けています。その結果は、国立科学博物館で何度か開 催した古代アンデス文明を扱った展覧会で紹介しました。

2010年以降には技術が進歩したことで、それまでミトコンドリアDNAの一部領域の解析に留まっていた古代DNA 解析も、核ゲノムを対象にすることができるようになりました。その結果、日本人の成り立ちについてもより詳細な解析 が可能になりました。縄文人のゲノム解析からは、彼らが現代のアジアには見ることので きない非常にユニークなDNAの構成をしていることが明らかになりました。またゲノム 情報をもとに古代人の姿形も復元できるようになりました。現在は縄文人や弥生人、古 墳時代の人骨を中心に大規模なゲノム解析プロジェクトを進めており、数年後には新た な日本人成立のシナリオを明らかにすることができると考えています。

ペルー・シカン博物館_調査風景ペルー・シカン博物館での調査風景
アンデス文明_展覧会アンデス文明の展覧会ポスター(インカ帝国展)
縄文人女性ゲノムデータから復顔された縄文人女性(礼文島船泊遺跡 23号)

研究者に 聞いてみました!

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1)これから取り組んでみたい研究は

もう残された研究時間が短いので、新しいことより、これまでの研究生活の中で知り 得たことを多くの皆さんに知ってもらう努力をしたいと思っています。そのために人類の 起源や日本人の成立に関する書籍をあと2~ 3冊は書きたいと思っています。

2)自身の研究内容と社会、一般との接点は  

日本人の起源は一般の方の関心の高い分野です。講演会などを行うとそのことを強く 感じます。ですから研究の結果分かった内 容は、専門誌に論文を書くだけではなく、 一般向けの書籍やテレビ番組などを通して皆さんに知って頂くように心がけています。 人類学は他の分野よりも一般の方との接点が多い研究分野だと思います。

3)研究以外の趣味や熱中していることはあ りますか

もともとサッカーが好きで、見たりプレーしたりしていました。応援するチームはサガン鳥栖です。プレーの方は、適当なグランドがないので今はフットサルをやっていま す。でも一昨年にプレー中にアキレス腱を断裂してしまい、あまり動けなくなりました。

4)今の職業に就いていなければ何をしてい ると思いますか

もともと医学部の教員でしたから、当館に来ていなければ、そのまま大学で先生をやっていたでしょう。学生相手に解剖学を教えていたと思います。人体解剖は奥が深い学問なので、もう少し突き詰めて研究したかっ たという思いはあります。