中国・内モンゴル自治区での小型哺乳類化石調査

冨田 幸光(としだ ゆきみつ)
生命史研究部
名誉研究員
日本海ができる以前の日本は、そのほとんどがアジア大陸の一部となっており、 その時代の哺乳類は、大陸のそれとよく似ていました。これまで進めてきた中新世前期(約2300万~1600万年前)の日本の哺乳類化石の研究と平行して、同 時代の中国の化石についても研究しています。
ウサギ類、ネズミやビーバーなどを含む齧歯類、トガリネズミなどの食虫類等をまとめて小型哺乳類とよびますが、その化石はとても小さいので、ちょっと変わった方法で採集します。化石が含まれていそうな地層をそのままツルハシやシャベルで採集し、乾燥させたあと篩の中で水をかけて、泥の成分を洗い落とします(下の写真)。残った残渣の中に小型哺乳類の化石(分離した歯や下あごなど)が集まっているので、顕微鏡を使ってそれらを拾い出すのです。
このような作業は中国の研究者と共同で行いますが、採集された化石のうち、私はウサギ類(兎形目:ウサギ科とナキウサギ科からなる)を分担しています。この時代のユーラシアには、不思議なことにウサギ科の動物はまったく生息しておらず、 ウサギ類はすべてナキウサギ科なのです。 岐阜県で見つかった絶滅したナキウサギ類 のアロプトックス属の化石を、昨年新種として命名しましたが、中国の種類を研究していたのですぐに新種とわかりました。
中国・内モンゴル自治区中部の「大紅山」(だほんしゃん)地域に露出する中新世前期(約1800万年前)の陸成層。
「大紅山」の産地から採集したナキウサギ類の
化石。大きいものは上あごと下あご、小さいも
のは分離した歯(箱の大きさは6cm×9cm)。
アロプトックス属の全種を、種を特徴づける下あごの第三小臼歯の断面図で示し、地質年代にしたがって並べた図。
左下の大きな種が、2012年に命名した岐阜県産の新種(アロプトックス・ジャポニクス)。
研究員に聞いてみました!

1)専門は何ですか?
小型哺乳類の系統進化と、それらの拡散ルートや古地理、大陸移動の問題などです。
2)研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?
中学1年から化石が大好きになり、所属した地学クラブの先輩たちの多くが古生物の大 学に進学していたので、自分も当然のように研究者の道に進みました。
3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?
最近は分子生物学が流行ですが、ウサギ科に関しては歯や頭骨などの形態から考えられてきた各属の系統関係と、分子によるそれとではまったく異なることがわかったこと。
4)研究者になりたい方に一言アドバイスを !
少なくとも高校3年までは、すべての科目をまんべんなく勉強すること。