Hideaki Kanzawa

神澤 秀明(かんざわ ひであき)
生命史研究
人類史研究グループ

私たち人類はアフリカで誕生し、およそ6万年前に アフリカを出て世界中に拡散していったと考えられてい ます。彼らがどのように世界を移動して現在の集団を形成したのかを探る方法の一つにDNA分析があります。通常このような研究は現代人を対象にしますが、私は遺跡から出土した人骨のDNA分析を行うことで、古代人がどこから来たのか、彼らのDNAは現在の私たちに受け継がれているのかを解明しようと試みています。

遺跡から出土した人骨には、DNA が残されていることがあります。ただし残されているDNAはごく微量なので、外部からのヒトの DNAの混入を避けなければいけません。下の写真は今年6月の石垣島での発掘の様子ですが、発掘者のDNAが混入しないように、いくら暑くても手袋を着用し、汗を垂らさないようにタオルでこまめに拭きながら作業をします。

石垣島_白保竿根田原洞窟遺跡垣島の白保竿根田原洞穴遺跡での発掘
骨を取り上げる時の様子です。作業時は手袋をすることで、DNAの付着を避けます。取り上げた骨は写真に写っているアルミホイルにくるんだうえで、小さな袋に入れて研究室に持ち帰ります。
つくば研究施設_クリーンルーム国立科学博物館つくば研究施設にあるクリーンルーム
部屋の外から見たクリーンルーム内部の様子です。作業をする際には専用の服、手袋、マスク、キャップを身に着け、実験者のDNAの混入が起こらないようにします。様々な試薬を用いて人骨から慎重にDNAを抽出していきます。この部屋には限られたメンバーしか入室できません。

発掘された骨の一部を用いて DNAの分析を試みます。分析は大きくDNAの抽出とその配列の解析の2つに分けられます。作業は実験者の DNA が混入しないように、上の写真のクリーンルームの中で慎重に行います。骨の保存状態が良好であれば、DNAを抽出することができ、特別な機械を用いて DNAの配列を解析することができます。それらの DNA 配列をほかの人類集団と比較することで、彼ら古代人の由来と現代人集団との関係を明らかにすることができるのです。

研究者に聞いてみました!

神澤博士
1)専門は何ですか?

古代人の骨に残されているDNAを分析することで、古代から現代にかけての人類集 団の遺伝的変遷を解明しようと試みていま す。

2)研究者になろうと思ったきっかけは?

日本人の起源に関する一冊の本を読んだこ とがきっかけです。

3)最近の研究活動で、最も興味深かった出 来事は何ですか?

DNA分析技術の向上により、古代人に関 する新知見が世界中の研究者から次々と報 告されています。

4)研究者になりたい方に一言アドバイスを!

結果はすぐに出ません。細く長く継続、そ してじっくりと考察することです。