アンモナイトを求めてフィリピンを歩く

生命史
Yasunari Shigeta

重田 康成(しげた やすなり)
生命史研究部
環境変動史研究グループ

白亜紀は地球温暖化の時代

白亜紀(約1億4500万年前~6600万年前)は、活発な火山活動と放出された温室効果ガスにより、現在よりもはるかに温暖な時代でした。恐竜が大繁栄し、花を咲かせる植物が登場しただけではなく、海底では酸素が欠乏する環境が何度も生じ、海の生態系に大打撃を与えまし た。白亜紀の研究は、温暖化が進行した未来の地球環境 と生物相を予測する上で、重要なヒントを与えてくれます。

ジャングル内_石灰岩ジャングルの中にある石灰岩の岩山。ここからアンモナイトが多産する。
なぜフィリピンなのか

白亜紀の地球環境を理解するには、地球上の様々な地域の地層と化石を調べる必要があります。フィリピンなどのジャングル地域は大地が植物で覆われているため、地層の露出状態が良くありません。そのため、地層や化石の研究がほとんど進んでおらず、研究の空白地帯になっています。

マニラから東へ飛行機で1時間ほどかかるところにカタンドゥアネス島があります。2007年に、住民がジャン グルの中の岩山からアンモナイトを見つけたのをきっかけに、2010年から科博はフィリピン国立博物館と共同で現地調査を行なっています。高温多湿なジャングルの中、岩陰で野宿しながら調査を行なった結果、多くのアンモナイトを見つけることができました。これらは約1億年前のもので、フィリピンでは初めて確認されました。これらと世界中の同じ時代の地層や化石を比較することによって、白亜紀の地球環境や生物相の特性がより理解できるのではないかと思っています。

調査地_ランチタイム調査地でのランチタイム。
約1億年前_アンモナイト掘り出した約1億年前のアンモナイト。

研究者に 聞いてみました!

重田博士_研究員に聞いてみました
1) 専門は何ですか

古生物学や地質学が専門です。特に、アンモナイトを対象として、分類、生態、多様性、系統、進化、化石化作用などを研究しています。アンモナイトの目を通して、古生代や中生代を覗きたいと思っています。

2)自身の研究内容と社会、一般との接点は

白亜紀の研究は、温暖化が進行した未来の地球環境と生物相を予測する上で、重要なヒントを与えてくれる可能性があります。

3)研究者になるために一番大事だと思うことは何ですか

あきらめないこと。自分で自分の可能性をつ ぶさないこと。

4)今の職業に就いていなければ何をしていると思いますか

子供の頃から考古学が好きで、高校の部活では本格的な遺跡発掘をしていました。古生物学か考古学か、多少迷いましたが、もし考古学を選択していたら、今頃は埋蔵文化財セン ターで遺跡の発掘に従事していると思います。