世界の珍しい植物や、日本固有の植物のフラボノイド成分の探索

岩科 司(いわしな つかさ)
植物研究部
名誉研究員
環境に適応するための化合物
現在地球上には約30万の野生植物が自生しています。これらはヒマラヤの高山帯から、乾燥地帯、さらには水の中にまで、あらゆる場所に適応しています。動物とは異なり、植物は基本的にその場所から動くことができません。そのために、形態の変化ばかりでな く、さまざまな化学成分を自ら作ることによって環境に適応しているのです。そんな化合物のひとつがフラボノイドです。植物では紫外線防御、花色発現、抗菌、抗酸化(抗ストレス)など、さまざまな 目的で合成されています。特に高山、海岸、あるいは石灰岩や蛇紋 岩のような特殊な基盤に生育している植物ではそれが顕著で、特殊な成分を多量に蓄積しているのがよく観察されます。
ブータン(ヒマラヤ山脈)の「ヒマラヤ の青いケシ Moconopsis bhutanica」 含まれているのは秋のカエデの葉の色素と同じ種類。日本全域で固有植物は32%
日本には約5000種の被子植物が自生していますが、そのうち約1600種(32%)が、世界中で日本でしか見られない野性植物です。ブナやスギのように広く分布するものもある一方、キタダケソウやオゼソウのように極めて限られた分布のものも多く、大抵は激しい環境条件のなかで生育しています。特殊な環境に育つ植物からは、私が研究しているフラボノイドのうちでもその発生が、極めて稀な成分を見つけることができます。植物はこのような成分を蓄積することによって環境に適応していることが多いのです。

絶滅危惧植物の成分解明は最優先課題
私は植物の内部指標としてのフラボノイドの探索を行ってきましたが、地球上の植物でフラボノイドが解明されているものは、おそらく3割もありません。日本固有の植物や世界でも珍しいといわれている植物の多くは、絶滅危惧植物であることが多く、特にこれら の植物の解析は最優先に行わなければなりません。もし、その植物に人類の生存を左右するような成分が含まれているとすれば、その植物の絶滅は、単にひとつの植物が地球上からなくなるだけではすまなくなるかもしれません。

研究者に 聞いてみました!
1) 専門は何ですか
植物に含まれるフラボノイドを中心としたポリフェノール成分について。特にライフワークとしているのが、花に含まれるアントシアニンなどの色素成分の特定と花色発現の機構についての研究です。
2)研究する上で一番だと思う事は何ですか
自分が興味を持っていることを究めること。 仕事だと思わないこと。ただし、研究を最終的に論文として発表する事は、特に研究職として給料をもらっている立場なら必須と考えています。これをしないのなら、ただの「趣味の切手集め」です。
3)今の職業に就いていなければ何をしていると思いますか。
私は中学から高校の頃、「遺跡の発掘」「作曲家」など、やってみたいと思った職業がいっぱいありました。今の職業でなければ、 仕事をやるほかは、おそらく週末や有給休暇はすべて登山に使っていたと思います。
4)座右の銘や本などがあればご紹介ください。
私は山梨県出身なので、武田節の一節「人は石垣、人は城、情は味方、仇は敵」です。 部長になってから特にそう感じています。