植物が作りだす化学物質の多様性と機能を探る

村井 良徳(むらい よしのり)
植物研究部
多様性解析・保全グループ
植物は長い進化の過程において、様々な環境に適応するために多種多様な化学物質を作り出してきました。そのなかでもフラボノイドやケイ皮酸誘導体などを含むフェノール化合物と呼ばれる物質群は多様化しており、フラボノイドを例にとると、これまでに8,000種類以上が報告されており、さらに花色発現・紫外線防御・抗酸化をはじめとする様々な機能を持っていることが 分かってきています。私は現在、1.どの植物にどのような物質が蓄積されているのか、2.蓄積されている物質が植物体内でどのような働きをしているのかなどに興味を持ち研究を進めています。

「高嶺の花」に秘められた化学物質のチカラ
植物は多様化しており、被子植物だけでも25万種以上が存在するとされていますので、残念ながら全ての植物を調査することはできません。私が主に研究対象としているのは、標高の高い地域に根付いている高山植物(右写真)です。この研究のきっかけは、 高所では生物にとって有害な紫外線が低所にくらべて強くなるため、植物が紫外線防御機能を持つフェノール化合物(「日焼け止め」にも例えられます)を蓄 積して、紫外線に対して適応している可能性が高いと考えたためです。
色々な高山植物を実際に分析してみると、多量のフェノール化合物を含有することも分かってきていま す。どうやら可憐に咲く「高嶺の花」は、紫外線防御物質を体にたくさんため込み、たくましく生きているようです。また高い山での調査は困難を伴うことも多く、 高山植物に関する研究例はまだまだ少ないのが現状ですが、その一方で絶滅の危機に瀕した植物がとても多いため、遺伝資源としての化学特性評価なども急務であると考え、研究を行っています。

研究員に聞いてみました!

1)専門は何ですか?
植物が作り出す化学物質を扱うPhytochemistryです。特にフラボノイドなどのフェノール化合物が専門です。
2)研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?
大学から山歩きをはじめ、その際に出合った植物たちの生き様に興味を持ちました。 研究室で色々な実験をするのも好きでしたので、これが仕事にできたら楽しいなと思いました。
3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?
筑波実験植物園(高温多湿の低地での露地栽培)で育てている高山植物が、可憐な花を咲かせていること。最初は無理だろうと言われましたが、色々と工夫しながらしっかりと手をかければ育つと実感しました。
4)研究者になりたい方に一言アドバイスを !
興味を持ったことに関しては、とことん勉強してください。また一歩ずつ着実に前に進めば、道は開けると思います。