絶滅危惧植物を地球規模で知る

植物
Goro Kokubukata

國府方 吾郎(こくぶかた ごろう)
植物研究部
多様性解析・保全グループ


琉球列島は九州から台湾までの約1,300km の間に連なる亜熱帯の島々をいいます。琉球列島は植物相が豊富で、単位面積当たりの種類数は九州以北の日本の約45倍にもなります。

その一方で琉球列島は日本で最も絶滅危惧植物が集中する地域でもあります。単位面積当たりの種類数は九州以北の日本の約60倍にもなります。

私はこの琉球列島に分布する植物を中心に絶滅危惧植物を地球規模で捉える研究をしています。

琉球列島
分子系統解析琉球列島産イトスナヅルとオーストラリア産Cassytha glabella は分子系統解析によって直接関係ないことが示され、果実の表面にも違いがみられた。

絶滅危惧植物を含む琉球列島の植物についての研究、特に国外産との比較などのグローバルな研究は十分とはいえません。

例えば琉球列島で僅かに分布するイトスナヅル(クスノキ科 絶滅危惧IA類)はこれまでオーストラリアと隔離分布する共通種と考えられていましたが、外部形態と分子系統解析によって、世界中で琉球列島だけに分布する地球規模の絶滅危惧植物であることがわかりました(左図)。

植物を保全するにはその植物をよく知ることが大切です。特に絶滅危惧植物が国外との共通種か、あるいは地域固有種かを見極める研究は地球規模での絶滅危惧植物を知る上で欠かすことができません。

私の研究が絶滅危惧植物保全に役立ち、多くの方に絶滅危惧植物を伝えることができればと願っています。

アマミカタバミアマミカタバミ(カタバミ科 絶滅危惧IA類)
日本で一番小さいカタバミの仲間。奄美大島とオーストラリアに分布するといわれているが詳しく調べなければいけない。
オキナワマツバボダン_ヒユ科オキナワマツバボダン(ヒユ科 絶滅危惧IA類)琉球列島の固有種といわれているが台湾や東南アジアにも似た種が分布する。
イラブナスビイラブナスビ(ナス科 絶滅危惧IA類)宮古群島の固有種とされていたが、台湾でも発見された。本当に同じ種かははっきりしない。

※絶滅危惧ⅠA類とは ごく近い将来における絶滅の危険性が極めて高い種、絶滅危惧種(狭義)のなかで絶滅の危険度が最も高い。