
國府方 吾郎(こくぶかた ごろう)
植物研究部
多様性解析・保全グループ
琉球列島は九州から台湾までの約1,300km の間に連なる亜熱帯(地上)の島々をさします。琉球列島の植物相は台湾など複数の隣接地域からの影響や島嶼隔離などによって成立し、高い生物多様性をもちます。単位面積当たりの種数は九州以北の日本と比べると約45倍にもなります。 その一方で琉球列島は日本で最も絶滅危惧植物が 集中する地域でもあります。ここで写真紹介している植物も全て絶滅の危機に瀕している植物たちです。 キバナノヒメリシイウチ(イウメ科)いま、私はこの琉球列島に分布する植物の系統、分 類、生物地理についての研究をしています。
キバナノヒメユリ(ユリ科)長崎県と沖縄群島に分布.海岸の原野に生育.
シイウチ(イウメ科)奄美大島、沖縄島、西表島、台湾に分布.渓流の湿った環境に生育.

琉球列島の植物についての研究はまだ 十分とはいえません。例えばこれまで区別があいまいだった日本のイワタバコという種内にはイワタバコ(屋久島以北)とタイワンイワタバコ(西表島)という2つの種類(変種)があることが私の研究によってわかりました(左図参考)。
このような分類学的に問題のある植物が 琉球列島にはたくさん分布しています。
植物を保全するにはその植物の生物学的特性をよく知ることも必要です。私の研究によって琉球列島の植物についての系統、分類、生物地理に関する知見が得られるとともに、そのことが絶滅危惧植物の保全に役立てばと願いながら研究しています。
オキナワマツバボダン(ヒユ科)奄美大島、沖縄島だけに分布.日当たりのよい海岸岩場に生育
マツムラソウ(イワタバコ科)西表島と台湾、中国に分布.滝そばの湿った環境に生育.
アマミカタバミ (カタバミ科)
奄美大島だけに分布.渓流の涼しい環境に生育
イトスナヅル(クスノキ科)
伊是名島だけに分布.原野でイネ科に寄生.