きのこの意外な謎に迫る!

保坂 健太郎(ほさか けんたろう)
植物研究部
菌類・藻類研究グループ
きのこって身近な生き物ですよね?でも実は様々な謎が残されているのです。むしろ、
ほとんど何もわかっていない、のがきのこの世界かもしれません。
そんな謎だらけのきのこについて、現在行なっている研究をいくつか紹介します。
①きのこは何種?
日本には約3000種、世界には約2万種のきのこが知られています。でも名前がついていなかったり、未発見のきのこを含めると、軽く10万種を超える、という推定もあります。世界中から毎年4000点を超える標本を集め、その全てからDNAを解析することで、きのこの進化と多様性を明らかにする研究を進めています。
ブータンの正体不明のきのこ(左)とアマゾンで採集した高さ5mm(!) のスッポンタケ類、Xylophallus(上)。②よく似たきのこ。 本当に同種?
身近な公園などでよく見かけるきのこと そっくりなものが、世界中どこでも見つか る場合があります。本当に同じ種なのでし ょうか?それとも他人の空似で、進化的には類縁関係に無いのか もしれません。そのような「共通種」と考えられてきたきのこを 世界の各大陸から採集し、DNAを解析しています。
小笠原(右)とニュー ジーランド(上)の水 色のきのこ。 遠く離れた地域に生 える同種? それとも 別種?
③放射能できのこは危険?
野生きのこの放射能濃度を測定すると、同じ地域に生えるきのこでも、とても高濃度な ものと、測定不可能なほど低い濃度のものが 両方あります。種によって異なる放射性物質の蓄積特性を明らかにするために調査を進め ています。
クサウラベニタケ
かなり高い放射能濃度だったが、 同じイッポンシメジ属でもほとんど値が検出されない種もある。
研究者に聞いてみました!

1)専門は何ですか?
菌類、特にきのこ類の分類・進化・多様性 について研究しています。
2)研究者になろうと思ったきっかけは?
山奥を歩きながら、もしきのこに詳しくなれば食べ物を持たなくてもサバイバルでき るのでは?と考えたのがきっかけです。でも実際にきのこ研究者になってみると、研 究対象である野生きのこを食べることは、 ほとんど無くなってしまいました。
3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?
小笠原諸島から、60年以上報告が無い超珍菌を自分でたくさん採集していたことです。 論文の図版や記述と比べる限り、まさか同じきのこだとは思いもよりませんでした。
4)研究者になりたい方に一言アドバイスを!
自分にしかできないこと、自分だからできること、を追及しましょう。それから、ユ ーモアを忘れないこともとても大事。すべ ての研究者はノーベル賞よりイグ・ノーベ ル賞を目指すべきだと考えています。