小笠原諸島海藻相の研究

北山 太樹(きたやま たいじゅ)
植物研究部
菌類・藻類研究グループ
2011年にユネスコ(UNESCO)の世界自然遺産に登録された小笠原諸島は、生物地理の区分では「オセアニア区」に位置し、日本列島と大きく異なる生物相がみられますが、海の生物である海藻は当てはまらず、琉球諸島に類似すると思われていました。
しかし、実際に小笠原水産センターや小笠原島漁業協同組合の協力でドレッジ(底曳き)調査を行ってみると、日本で初めてとなる(日本新産)海藻種や奇妙な姿の新種が採集され(下写真参照)、小笠原の海藻相がオセアニア区と共通する要素をもつことが分かってきました。小笠原諸島は海藻にとっても「世界遺産」であるといえそうです。
陸上生物の分布で世界を8つに分ける生物地理区(※)では、
小笠原諸島は「オセアニア区」に位置している。
※ほかにエチオピア区と南極区がある。
日本新産のアオサ藻ミル属の1種
ハワイや西オーストラリアなどに分布。
日本新産の紅藻ハイキヌイト
世界に広く分布するが、稀産の海藻である。
新種の紅藻スジアリグサ
スジナシグサ属でありながら「スジ」をもつ。
新種の褐藻ウミタンポポ
ケヤリモ目の1種と考えられるが、研究中である。
研究者に聞いてみました!

1)専門は何ですか
海藻学です。海藻の分類、進化、地理的分布、海藻相を研究しています。最近は、絶滅が危惧される淡水産紅藻や明治時代における海藻学の歴史についても調査を行っています。
2)やりがいを感じるのはどのような時ですか
まだ誰も見たことがない海藻を捕まえるのは、宝探しのように興奮します。しかもそれは人間でなく、自然が海底に隠した天衣無縫の宝物ですからなおさらです。
3)研究以外の趣味や熱中していることはあり ますか
展示にも力をいれています。日本館の「日本の海藻」(2007年)、地球館の「系統広場」(2004年)や「地球史ナビゲーター」(2015年)などを立案・担当しました。最近では、企画展「マリモ発見120年マリモの謎─どこからきたのか? なぜまるいのか? ─」(2017年)を企画し、14万人にご来場いただきました。
4)座右の銘や本などがあればご紹介ください
座右の銘「ああ日本のどこかに私を待ってる藻がいる」。本『巨人の星』。