シダのハート(配偶体)はどこにある?

植物
Atsushi Ebihara

海老原 淳(えびはら あつし)
植物研究部
陸上植物研究グループ


シダ植物は、普通の葉をつける体(胞子体)のほかに、全く違う形をしたもう一つの体(配偶体)を持っています。配偶体は、わずか数ミリの小さいハート型をしたものが多く、「前葉体」とも呼ばれます。 切り通しの崖で土の上をじっと見つめると、透明感のある緑色をした配偶体を探し出すことができます。 シダは一生(生活環)の中で、必ずこの配偶体の時期を経るのですが、小さい上に受精を終えると枯れてしまうため、野外での生きざまは十分には解明されていません。また、配偶体の形によってシダの種を見分けるのも困難でした。

私たちは、野外で集めた微小な配偶体から DNA の塩基配列情報を得ることによって、どんな種の配偶体がどこに生育しているのかを調べました。その結果、多くの配偶体は親(胞子体)から数m以内に生育していることがわかりましたが、中には近くに全く親が見あたらない例も見いだされました。極端な例では、これまで日本で胞子体が記録されたことのない種の配偶体まで見つかったのです。これからも、シダのハートを探して野山を歩くことになりそうです。

シダの一生と様々な配偶体

研究員に聞いてみました!

海老原先生
1)専門は何ですか?

シダ植物の分類が専門です。「分類」と言っても種に名前をつけることだけでなく、見分けにくい種の裏側にある「事情」を明らかにすることで生物の実体を把握することを目指しています。

2)研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?

「生物の分類には、まだ解明されていないことがたくさんある」という事実を、科博の普及活動に参加して学んだのがきっかけです。

3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?

新しい発見をこの場で発表するわけにはいきませんが、毎日「興味深い発見」の連続です。

4)研究者になりたい方に一言アドバイスを !

どんな些細なテーマでもいいのですが、「世界で自分だけがわかる(知っている)こと」を手に入れるとよいでしょう。