Hirotsugu Ono

小野 展嗣(おの ひろつぐ)
動物研究部
名誉研究員


それこそ雲をつかむようなはなしですが、 「クモ学」という希少な学問分野がありまして世界に1,000人ほどの研究者がいます。 生態学、発生学、生理学、系統学そして分類学などあらゆる方法を駆使してこの摩訶 不思議な8本脚の動物を理解しようという自然史科学の一分野です。

クモの研究者の世界は良く組織されてい て、毎年どこかで国際会議が開催されています。また、私が編集者の一人を務めるWorld Spider Catalogというウェブサ イト(http://www. wsc.nmbe.ch)では 、その時点の世界中のクモ( 現在約 46,000種)の分類に関する情報を誰でも瞬時に得ることができます。

とくにハラフシグモ類をずっと追い続けています。古生代の化石が知られ、今の地球では東アジア(日本、中国、ミャンマー、ベトナム、タイ、ラオス、マレー半島、スマトラ島)だけに生息する原始的な仲間です。環境の良い森林に生息し、地中にトンネル状の巣を作ります。

1754357128643コガネグモ♀(コガネグモ科):日本を代表する大型種、体長27mm
ハラフシグモ属の一種♀ハラフシグモ属の一種♀(ハラフシグモ科): タイ国産、体長約30mm チョウや甲虫などとちがい、クモ類は液浸標本にします。 調査や研究の方法は昆虫類と同じです。
キムラグモキムラグモ♀(ハラフシグモ科):鹿児島産、体長12mm

研究者に 聞いてみました!

小野博士-02
1)やりがいを感じるのはどのようなときですか

自分の論文が海外の研究者に影響を与えたと感じたときです。先駆的な仕事が国際ク モ学会賞(2010)の受賞に繋がりました。

2)研究する上での苦労や悩みなどはありますか

象1頭と虫1匹がもっている情報はそれほど 変わらないのですが、虫の研究は世間一般 には軽視されがちで、場所を取らない利点 が生かされていないように思います。

3)今の職業に就いていなければ何をしていると思いますか

大学卒業時、銀行へ勤めるのをやめてドイツへ留学。科博に就職するときには外務省 に内定していたのを断わりました。どちらも大きな岐路でした。

4)座右の銘や本などがあればご紹介ください

「ローマは一日にして成らず」(英国のことわざ)、「理系には文学・芸術を、文系には理科の合理性を」(福井謙一)、「塩の辛さや砂糖の甘さは学問では理解できないが、なめてみればすぐ分かる」(松下幸之助)。『約束されぬ地の眺めある動物学者の歩み』(丸山 工作 著)。