小さくたっておもしろいハチの研究

井手 竜也(いで たつや)
動物研究部
陸生無脊椎動物研究グループ
タマバチという昆虫をご存知ですか? わずか数mm の小さな体に、たくさんの不思議を詰め込んだハチの仲間です。その多くは、植物に卵を産みつけ、その部位を「虫こぶ」と呼ばれる構造に作り変えて生活しています。虫こぶには、幼虫のえさや、成虫になるまでのすみかとしての働きがあります。
タマバチの多くは、ドングリの木の仲間に、春と夏 ~秋の2回、虫こぶを作ります。おもしろいことに、春にできた虫こぶからはオスかメスが出てくるのに対し、夏~秋にできた虫こぶからはメスだけが出てきます。さらに、春と夏~秋にできる虫こぶやそこから出てくる成虫は、同じ種であっても、違った姿かたちをしています。また、夏~秋の虫こぶから出てくる成虫の中には、雪が降るような真冬に活動するものもいます。こんなハチはおそらくタマバチ以外にはいません。
タマバチの多様性や生態はまだまだ謎に包まれて います。日本を含むアジアのタマバチについての研究に取り組んだ結果、次々と新種が発見され、アジアがタマバチの宝庫であることがわかってきました。今後このアジアのタマバチについての研究にいっそう力を入れ、タマバチの多様性や不思議な生態を解き明かしていきたいと考えています。
ナラメリンゴフシ
12月に産卵場所を探して歩き回るナラメリンゴタマバチのメス成虫。産卵された芽はナラメリンゴフシと呼ばれる虫こぶに作り変えられる。
タマバチによって作られた虫こぶ。クヌギハマルタマフシ(左)とナラハ
ナケタマフシ(右)。タマバチの種ごとに色や形が違っている。
ナラメリンゴタマバチの春の虫こぶのメス成虫(左)と秋の虫こぶのメス成虫(右)。本種の春の虫こぶはナラ類の芽に作られ、秋の虫こぶはナラ類の根に作られる。同じ種であっても体のつくりや虫こぶの形が大きく違っている。研究員に聞いてみました!

1) 専門は何ですか
昆虫、特にハチ目タマバチ科の分類や生態に関する研究に取り組んでいます。
2)これから取り組んでみたい研究は
タマバチの研究を発展させながら、もっといろいろな昆虫についてこれからも勉強し、それらを対象とした研究にも携わっていきたいです。
3)やりがいを感じるのはどのような時ですか
研究成果を発信して、研究を通して自分が 感じた昆虫の不思議さやおもしろさがうま く伝わった時です。
4)今の職業に就いていなければ何をしてい ると思いますか
子供の頃から生き物が好きだったので、研究者ではなくても、何か生き物にかかわる仕事をしていたと思います。