他の生物を住み家とするヒドロ虫類

動物
Hiroshi Namikawa

並河 洋(なみかわ ひろし)
動物研究部
海生無脊椎動物研究グループ


刺胞動物(クラゲやイソギンチャクの仲間)であるヒドロ虫類は、海中で岩や他の生物(海藻や魚 類、無脊椎動物)などの表面に固着して生活しています。そのなかで、他の生物(以下、「宿主」とする) 上で生活するヒドロ虫類には、決まった宿主の体表にのみ棲息する種と、複数の宿主上にこだわりなく棲息する種が認められます。 

特に、決まった宿主上でしか生きることのできな いヒドロ虫類は、その宿主に出会いそれを住み家となすことが、その後の生存にとって必要不可欠であることは言うまでもありません。また、地球上にその宿主が現れた後に、それを住み家とするヒドロ虫 類が現れたと考えるのが自然です。

 このような決まった宿主上でしか生きることのできないヒドロ虫が、どのような要因で地球上に出現したのかを明らかにすることは、生物がどのように多様化してきたのかを考える上でもとても興味深い ことです。

そこで、他の生物の体表にのみ棲息する種を含むヒドロ虫の幾つかのグループを選び、それらのグループ内のそれぞれのヒドロ虫類の住み家は何かを調べるとともに、DNAの塩基配列を比較することでグループ内の類縁関係を解明するという方向から、この問題に取り組んでいます。

決まった宿主上に棲息するヒドロ虫類
ミサキアミネウミヒドラ巻貝のキヌボラ上のミサキアミネウミヒドラ
タマクラゲムシロガイ上のタマ クラゲ
エボシタマクラゲベニフデガイ上のエボシタマクラゲ.矢印で示したように貝殻にくっついているものがヒドロ虫

研究者に 聞いてみました!

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1)専門は何ですか

ヒドロ虫の生物学。ヒドロ虫とはどのような動物なのかを、発生、生態、形態などあ らゆる面から研究し、その分類学的な位置を含め、生物としての特性を明らかにした いと考えています。

2)やりがいを感じるのはどのような時ですか

例えば、海底から採集したたくさんの石の表面を実体顕微鏡下で丹念に調べ、探し求 めていた微小な生物を見つけ出した時です。

3)研究する上で一番大事だと思うことは何で すか

泥臭く地道な作業を積み重ねることだと思います。

4)研究者になるために一番大事だと思うこと は何ですか

流行に左右されず、「当たり前」と思われ ていることでも疑問を持ち、突き詰めて考える習慣を持つことだと思います。