昭和天皇コレクションとともに20年

並河 洋(なみかわ ひろし)
動物研究部
海生無脊椎動物研究グループ
昭和天皇ご収集標本(昭和天皇コレクション)が宮内庁生物学御研究所から国立科学博物館に移管され、その管理の任を仰せつかってから 20年になります。昭和天皇コレクションについては、 館内外の研究者の協力のもと整理や研究をすす め、その成果を着実に発信しています。生物学御 研究所時代に相模湾の海産動物についての研究書が12冊出版されていますが、それを引き継ぐ形で、平成25年度中に「相模湾産八放サン ゴ類」という研究書も館外の研究者との共著として出版する予定です。
昭和天皇のご専門であったヒドロ虫類についての研究は、移管された標本を調べることに加え、 新たに標本を収集したり、飼育して形の変化を調べたり、さらに、館外の研究者と共同で新たな種の特徴を発見したりすることで、新種の記載も含 めて、その成果を発信しています。 今後もできうる限り成果の発信を続けていきたいと思っています。
昭和天皇コレクションの うち、ヒドロ虫について 取り纏めた標本カタログ
Cytaeis kakinumae Namikawa and Deguchi, 2013 のポリプ。最近、浅い海に棲む巻貝ベニフデガイの貝殻上から発見された。 貝殻からのびている突起状のものがポリプ。ポリプの大きさは 1mm ほど。
ポリプを飼育していると将来 クラゲとなって遊離するクラゲ芽が つくられる。
ポリプから遊離したクラゲを20日間飼育すると成熟した。その成熟クラゲの形態から新種のヒドロ虫であることが判明した。クラゲの大きさは、1.5mm ほど。研究員に聞いてみました!

1)専門は何ですか?
ヒドロ虫の生物学。ヒドロ虫とはどのような動物なのかを、発生、生態、形態などあらゆる面から研究し、その分類学的 な位置を含め、生物としての特性を明らかにしたいと考えています。
2)研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?
子供のころから分野を問わず実験や観察などは好きでしたが、高校で生物の授業中にショウジョウバエを使った遺伝の 実験を体験し、生物のなかにある法則性を見出すことの面白さを実感したことが生物学に進むきっかけかと思います。
3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?
東京近くの浅い海からヒドロ虫の新種を見つけ、深海だけでなく身近な海にもまだまだ未知のことが隠されている ことをあらためて実感したことです。
4)研究者になりたい方に一言アドバイスを !
研究の“種”は身近なところにたくさんあります。「当たり前」と思われていることを疑うことでその種を見つけることが多いです。