毛膚海紐の研究

齋藤 寛(さいとう ひろし)
動物研究部
海生無脊椎動物研究グループ
みなさんが食べるアサリやホタテガイ、サザエ、あるいは近年話題の巨大なダイオウイカはいずれも軟体動物のなかまです。私はその軟体動物のなかでもヒザラガイ類やカセミミズ類といった“原始的”なグループの研究をしています。
一昨年からは、やはり“原始的”なグループの1つであるケハダウミヒモ類の研究を始めましたので、ここで紹介したいと思います。ケハダウミヒモ類は右の写真のような細長い動物です。
貝殻はありませんが、体の表面は石灰質の鱗片で被われており、光沢があります。体の大きさは2 mmから2cmほどのものが多いのですが、2008年にメキシコ湾の深海で見つかった世界最大の種は40cmにも達します。海底の泥のなかにすみ、泥のなかの微細な生き物を食べて生活しています。世界中から130種ほどが知られていますが、日本では名前の付いたものがわずかに2種だけです。しかし実際には日本にも世界にも、もっと多くの種がすんでいることは間違いありません。あまり研究が進んでいないのです。
私はまず日本の海にどんなケハダウミヒモ類がすんでいるのかを明らかにしたいと思っています。
日本近海で採集されたケハダウミヒモのなかま
(おそらくそのほとんどが新種)
体の後端に棘の房があり、その中央部のくぼみに1対の鰓が収納されている。その反対側の端に口がある。左上は生時の写真で、内臓の色が透けて見える。他はアルコール液浸標 本。スケールはすべて1 mm。
研究者に聞いてみました!
1)専門は何ですか?
軟体動物の分類が専門です。特にヒザラガイやカセミミズなどが対象です。
2)研究者になろうと思ったきっかけは?
大学の卒業研究や大学院での研究で研究の 面白さを知ったことです。
3)最近の研究活動で、最も興味深かった出 来事は何ですか?
ケハダウミヒモ類は新しい研究対象で、生きているときの動きや体色、解剖して観察した体の外側、内側の構造など、そのすべてが新鮮で興味深いものでした。
4)研究者になりたい方に一言アドバイスを!
いろいろなことに興味を持って、試してみてください。
