ミズラモグラを新属にしよう

動物
Shin-ichiro Kawada

川田 伸一郎(かわだ しんいちろう)
動物研究部
脊椎動物研究グループ


ミズラモグラはかつて幻のモグラといわ れていました。明治初期に横浜に居住した 英国人、ヘンリー・プライアが大英自然史 博物館に送った標本をタイプとして、同館 の脊椎動物学者、アルバート・ギュンター が1880年に新種として記載したもので す。ところがそれから50年以上、当館の故 今泉吉典氏が1949年に再発見するまで記 録がありませんでした。

その後ミズラモグラは、アジア大陸に広 く分布するアジアモグラ属(Euroscaptor) というグループに入れられていました。歯 の数がこの属と同じだから、というのが理 由でしたが、実は僕が調査を始めるころま では、大陸のモグラを採集した人も標本も 少なく、ミズラモグラとどれくらい似てい るのかはわかっていなかったのです。

僕はこのミズラモグラとアジアのモグラ の違いについて知りたくて、いくつかの国 でアジアモグラ属の5種を採集し、外部形 態や骨の特徴を調べてきました。自分で 採集するというのはとても大切で、標本に は残らない細かな特徴まで調べることが できます。結果、アジアモグラ属が共有 する特徴とは全く異なっていることがわか りました。そこで僕は「山の穴掘り屋さん」 を 意 味 する 新 属Oreoscaptorとするよう 2016年に記載しました。

モグラ_歯の違い
アジアモグラの種
モグラ_骨盤の違い
NoPath - コピー (45)
1)自身の研究内容と社会、一般との接点は

自分の研究というよりも、僕が集めた標本が多くの方の研究に利用され、また当館の展示に使われて、多くの方に満足してもらえることかな。僕の存在意義は研究者としてよりも標本収集者としての方が高いと思っています。

2)研究以外の趣味や熱中していることはありますか

休日を子供たちと遊ぶのが楽しいです。

3)研究する上で一番大事だと思うことは何ですか

情熱。

4)今の職業に就いていなければ何をしていると思いますか

町の動物好きおじさん。