生態濃縮によらない放射性セシウムのフクロウの繁殖への影響

動物
Isao Nishiumi
西海 功(にしうみ いさお)
動物研究部
脊椎動物研究グループ

食物連鎖
種別卵のセシウム量_グラフ

2011年の福島第一原発事故によって大量に放出された放射性セシウムが森林生態系の中で野生動物に与える影響を調べるため、生態系ピラミッドの頂点に位置する捕食者の一つであるフクロウの繁殖について調査しています。

福島県内に83個設置した巣箱のうち2015年に繁殖に使われたのは7個でしたが、高線量地域でも繁殖は見られました。巣箱周辺の土や餌動物のネズミ類、フクロウのヒナ、卵、糞、ペレット(未消化物を吐き出したもの)のセシウム量を調べたところ、フクロウのヒナや卵の線量は土やネズミ類と比べて10分の1程度の汚染量で多くは糞として排出されており、生態濃縮は起きていないことが示唆されました。しかし、高線量地域のヒナは発育が悪いことが多く、また抗酸化物質として健康のバロメータとなるカロテノイドの量が高線量地域ほど少ないことがわかり、健康への影響は懸念されます。

巣箱設置の様子

研究者に 聞いてみました!

西海博士_巣箱設置
1)専門は何ですか

本来の専門は鳥類の分子生態学といってDNAを使って鳥の生態や種分化などについて研究する分野ですが、福島原発事故をきっかけに鳥類への放射能の影響も調べています。

2)自身の研究内容と社会、一般との接点は

自然のありようを知ること以外には、希少種の分類や選定などに役立ち、道路敷設 や発電所建設など開発行為をおこなうときの環境アセスメントに関わってきます。

3)やりがいを感じるのはどんな時ですか。

常識を覆す研究結果が得られたときに研究の喜びを感じます。そのような成果に多く の来館者が耳をかたむけてくれるときにやりがいを感じます。

4)研究以外の趣味や熱中していることはありますか

飼い鳥の飼育です。今はポウターというイエバトの一品種、文鳥、ウズラを一羽ずつ飼っています。ウズラがよく馴れていてイヌのようにじゃれついてくるのがかわいいです。