野鳥を捕獲して地域変異を研究

動物
Isao Nishiumi
西海 功(にしうみ いさお)
動物研究部
脊椎動物研究グループ

同じ種の生き物でも体の大きさや色などに地域による違いがあり 、それを 「地域変異 」と呼びます 。鳥などの動物でよく知られる地域変異は、南の集団ほど体が小さくなるベルクマンの法則 、南の集団ほど黒っぽくなるグロージャーの法則などです 。日本の鳥でベルク マンの法則がよく当てはまるのはメジロやハシブトガラス、グロージャーの法則がよく当てはまるのはシジュウカラやヒヨドリです 。フクロウは両方がよく当てはまります。

グロージャーの法則がよく当てはまるヒヨドリは 、 本州から沖縄諸島まではベルクマンの法則にも当てはまりますが 、さらに南の八重山諸島ではまた体が大きく なります。DNA を分析してみると 、沖縄諸島の集団が古い系統で 、八重山諸島の集団と奄美以北の集団は新しい系統であることがわかりました 。ヒヨドリは起源が沖 縄諸島にあり 、沖縄諸島か ら北へ分布を広げながら環境に適応して白っぽく大きく なり 、北海道や東北など北 方の集団は渡りの行動を進化させて 、その一部は八重 山諸島に定着し 、色は黒くなったと推定されます 。八重山諸島のヒヨドリは大きさについてはまだ十分に環境適応しておらず 、現在進行形で徐々に小さくなりつつあるのかもしれません。

西海博士
リュウキュウメジロリュウキュウメジロ
カスミ網での捕獲カスミ網での捕獲

研究員に聞いてみました!

スクリーンショット 2025-07-31 155103
1)専門は何ですか?

鳥類の分子生態学と呼ばれる分野で、DNA を分析することで生態や種分化を明らかにする学問です。

2)研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?

子供のころから動物が好きで、文鳥やセキセイインコを飼っており、動物行動学に興味をもっていました。大学生時代の研究で DNA 分析の手法に出会って、本当の親子がわかったり、鳥の雌雄がわかったりすることでわくわくするような新たな発見があり、研究のおもしろさを知りました。

3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?

ユーラシア大陸に広く分布しているカケスの起源が本州以南に分布する日本のカケスである可能性がDNA 分析から示唆されたことです。

4)研究者になりたい方に一言アドバイスを !

「好きこそものの上手なれ!」 とにかく好きなことに没頭することです。