ヒトデとクモヒトデ

藤田 敏彦(ふじた としひこ)
動物研究部長
海生無脊椎動物研究グループ
ヒトデとクモヒトデ
ヒトデ類もクモヒトデ類も同じ棘皮動物に属する動物群です。体の中央の盤と呼 ばれる部分から5本の腕がのびています 。体が5つのほぼ同じ部分からできているのが棘皮動物の特徴の一つです。クモヒトデ類はヒトデ類の一部ではなく、ヒトデ 類とは異なる動物群です。特に、腕の骨格 の構造が全く異なっています。
ヒトデ類とクモヒトデ類腕の横断面で見た骨格の模式図。
ヒュウガケイマンヒトデ深海の底に沈んでいる陸上の樹木の断片で暮らしているヒトデ。生態はまだ良くわかっていない。
棘皮動物の進化
棘皮動物には他にも、ウミユリ類、ウニ類、ナマコ類がいます。これらはどのような順序で進化をとげたのでしょうか。ウミユリ類が最も古く、ウニ類とナマコ類は最も近縁であることはわかっていますが、ヒトデ類とクモヒトデ類がどのように進化してきたのかがまだはっきりとはわかっていません。
ヒュウガケイマンヒトデ深海の底に沈んでいる陸 上の樹木の断片で暮しているヒトデ 。生態はま だ良くわかっていない。
ワニカワハスノハクモヒトデ平たいクモヒトデで 、腕は非常 に細く短くて容易にもげてしま う。二枚貝の死殻の内側などに ぴったりと貼りついている。
トゲクモヒトデ科の1種普段は潮間帯や潮下帯の砂底に暮らすが 、クラゲに乗るこ とがある 。理由は明らかになっていないが 、分布域を広げ るためかもしれない。
多様性と系統
そんなヒトデ類やクモヒトデ類の多様性や系統を明らかにするために、研究を進めています。これまでの調査で、珍しい種も色々と採集されています。一風変わった興味深い生態も見つかってきました。また、たくさんの種から DNA を採取することにより、遺伝情報から系統を推定しています。それら様々な角度の研究から、ヒトデ類やクモヒトデ類がどのような進化 をとげたのかを探っています。
トヨシオマリヒトデヒトデというと星形の体を思い浮かべるが 、実は 様々な形のヒトデがいる 。このヒトデは 、まんまる の玉のようなとても珍しい形をしている 。写真は 、 上(A)、下(B)、横(C)からみたところ。
ツルクモヒトデ類
の系統樹DNA から推定した系統と形態の差を元にして、新しい分類体系を構築する。
研究員に聞いてみました!

1)専門は何ですか?
動物系統分類学、海生無脊椎動物学が専門です。特に、棘皮動物を対象として、分類、生態、多様性、系統、進化を研究しています。
2)研究者になろうと思ったきっかけは何ですか?
野外に出られる仕事をしたいと思い 、研究の道に足を踏み入れました 。研究船に乗って初めて調査に出て、海底で網を曳いたところ、最もたくさん採れたのがクモヒトデ類だったので、クモヒトデ類の研究を することとなりました。
3)最近の研究活動で、最も興味深かった出来事は何ですか?
シンガポールでのトロールによる海底生物の調査で 、普段は滅多にとれないテヅルモヅルの仲間が 、手あたりしだいにたくさん採れたことです 。 博物館に持ち帰っており、これから研究を進めます。
4)研究者になりたい方に一言アドバイスを !
研究対象に関するスペシャリストを目指して下さい。その対象が好きで、それについて何でも知りたいと思うことが大切です。