第1006号(2026.6.11)

上野本館は、展示物保護のため、2026年6月22日(月)~26日(金)の5日間を臨時休館し、館内のくん蒸(害虫駆除)を行います。くん蒸後は十分に換気を行い、安全を確認したうえで、6月27日(土)より開館予定です。
休館の間、お手持ちのスマートフォンやパソコンで、いつでもどこでも、自由に当館の展示をお楽しみいただける「おうちで体験!かはくVR」などいかがでしょうか?過去の企画展や常設展示を高画質で撮影し、3Dビュー+VR映像で公開しております。ぜひご鑑賞ください。
おうちで体験!かはくVR -国立科学博物館(リンクを新しいタブで開きます)
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★★★ 目次 ★★★
◆ エッセイ ◆
ねずみのペレス
上の歯は下に、下の歯は上に。これを聞いて乳歯のことだなとピンと来た方は大正解。日本のおまじないだそうです。アメリカには歯の妖精がいるということをアメリカドラマにハマっていた大学生の頃に知りました。抜けた乳歯を枕の下に置くと、寝ている間に歯の妖精がコインに交換してくれます。本物のお金をくれることもあるのだとか。
そしてつい最近、スペインには『ラトンシート・ペレス』という童話を元にした別の物語があることを知りました。抜けた乳歯を枕の下に置くというところまで同じなのですが、それをプレゼントと交換するのは、ねずみのペレスです。ペレスを知るきっかけになったのは、最近私たちが発表した論文です。スペインの共同研究者が論文成果を元に一般向けの記事を書いてくれているのですが、その序章にペレスが登場します。ペレスの歯には、赤ちゃんの時に飲んだミルクのことも、子どもの頃のごはんについても、しっかり記録されていると知ったら驚きませんか?という具合です。その記録を読むツールが同位体分析です。わたしたちの研究では、歯のエナメルには「母乳を飲んでいた期間」が炭素同位体比のシグナルとしてしっかり記録されていることを示しました。炭素同位体比は化学分析の中でも比較的容易で、化石にも応用しやすいので、化石種の母乳について調べたいと思っています。ペレスとはこれからも長い付き合いになりそうです。
そしてつい最近、スペインには『ラトンシート・ペレス』という童話を元にした別の物語があることを知りました。抜けた乳歯を枕の下に置くというところまで同じなのですが、それをプレゼントと交換するのは、ねずみのペレスです。ペレスを知るきっかけになったのは、最近私たちが発表した論文です。スペインの共同研究者が論文成果を元に一般向けの記事を書いてくれているのですが、その序章にペレスが登場します。ペレスの歯には、赤ちゃんの時に飲んだミルクのことも、子どもの頃のごはんについても、しっかり記録されていると知ったら驚きませんか?という具合です。その記録を読むツールが同位体分析です。わたしたちの研究では、歯のエナメルには「母乳を飲んでいた期間」が炭素同位体比のシグナルとしてしっかり記録されていることを示しました。炭素同位体比は化学分析の中でも比較的容易で、化石にも応用しやすいので、化石種の母乳について調べたいと思っています。ペレスとはこれからも長い付き合いになりそうです。
◆ 筑波研究室トピックス ◆
研究者に聞きました
今回は、当館植物研究部 多様性解析・保全グループの奥山雄大研究主幹に、研究内容についてインタビューしました。
Q1どのような研究をされているのですか?
奥山:野生植物の花の色や形、香りがいかにして、現在見られるような多様な姿に進化したのかを、特に花にやってきて花粉を運ぶ昆虫(送粉者)に着目して研究しています。まるで何か約束事でもあるかのように、ある花には限られた種類の昆虫だけが寄ってくるのですが、そこにはその花から昆虫に届けられる特別な信号があるはずです。私はその信号の中でも、非常に複雑な情報を持つ「香り」に注目しています。
花の香りは実際には知られているだけで何千種類という物質から成り立っており、それが様々な組み合わせ、割合で花から放たれており、昆虫もそれを感じ取っていると考えられます。例えばチャルメルソウとコチャルメルソウという植物の花は京都の山などでは隣り合って咲いていて、どちらも非常に地味な見た目なのですが、それぞれ異なる、決まった昆虫だけがやってきて花粉を運びます。この特別な関係も両者で異なる花の香りで決まっていることが私たちの研究から明らかになっています。
さてこの花の香りですが、これは花の細胞の中でものすごい勢いで作り続けられ、細胞の外に放出されている化学物質で、その化学反応を司っているのは花の細胞内の酵素であり、その酵素の性質を決めているのは植物の遺伝子ということになります。つまり言ってしまえば、植物の遺伝子には、どのような昆虫を花に呼び寄せるのかが書き込まれているということになります。この昆虫との関係性が「遺伝子に書き込まれている」というところが花の進化を考える上で大変エキサイティングな点だと考えています。
Q2日々どんなことを考えて研究していますか?
奥山:物心ついた時から生き物が好きで、どんな時でも自分の周りにどのような生き物が潜んでいるかばかりを目で追っています。どんな生き物も、毎年のように繁殖して命を繋ぎ、何万年、いや何億年というスケールで一度も途切れることなく続いてきた結果として自分の目の前にいて、自分もまた同じようにそうして繋がって今ここに立っていると考えると、えも言われぬ感動があります。
自分の専門である花と昆虫の関係に立ち戻ると、毎年決まった時期にある花が咲き、そこに決まった昆虫が訪れて受粉し、種子が実り、ということが繰り返されているということはただただ驚異です。例えば先に挙げたチャルメルソウやコチャルメルソウの花の場合、京都の山の中では必ずミカドシギキノコバエやフタマタキノコバエといった昆虫が花にやってきているのを観察することができるのですが、筑波実験植物園にはこれらの昆虫が生息しておらず、したがって花を訪れるこれらの昆虫の姿を見ることはできません。植物園で生きた植物を栽培し、観察することで様々なことが分かりますが、それでも本来の自生地でその植物の生き様を調べることは何ものにも代えがたい、かけがえのないものだと思い知らされます。
生物学は、対象とする生物が生態系の中でどのように他の要因と関わりながら生きているかを常に考えることで、真に魅力的な学問になるのだと思います。
Q1どのような研究をされているのですか?
奥山:野生植物の花の色や形、香りがいかにして、現在見られるような多様な姿に進化したのかを、特に花にやってきて花粉を運ぶ昆虫(送粉者)に着目して研究しています。まるで何か約束事でもあるかのように、ある花には限られた種類の昆虫だけが寄ってくるのですが、そこにはその花から昆虫に届けられる特別な信号があるはずです。私はその信号の中でも、非常に複雑な情報を持つ「香り」に注目しています。
花の香りは実際には知られているだけで何千種類という物質から成り立っており、それが様々な組み合わせ、割合で花から放たれており、昆虫もそれを感じ取っていると考えられます。例えばチャルメルソウとコチャルメルソウという植物の花は京都の山などでは隣り合って咲いていて、どちらも非常に地味な見た目なのですが、それぞれ異なる、決まった昆虫だけがやってきて花粉を運びます。この特別な関係も両者で異なる花の香りで決まっていることが私たちの研究から明らかになっています。
さてこの花の香りですが、これは花の細胞の中でものすごい勢いで作り続けられ、細胞の外に放出されている化学物質で、その化学反応を司っているのは花の細胞内の酵素であり、その酵素の性質を決めているのは植物の遺伝子ということになります。つまり言ってしまえば、植物の遺伝子には、どのような昆虫を花に呼び寄せるのかが書き込まれているということになります。この昆虫との関係性が「遺伝子に書き込まれている」というところが花の進化を考える上で大変エキサイティングな点だと考えています。
Q2日々どんなことを考えて研究していますか?
奥山:物心ついた時から生き物が好きで、どんな時でも自分の周りにどのような生き物が潜んでいるかばかりを目で追っています。どんな生き物も、毎年のように繁殖して命を繋ぎ、何万年、いや何億年というスケールで一度も途切れることなく続いてきた結果として自分の目の前にいて、自分もまた同じようにそうして繋がって今ここに立っていると考えると、えも言われぬ感動があります。
自分の専門である花と昆虫の関係に立ち戻ると、毎年決まった時期にある花が咲き、そこに決まった昆虫が訪れて受粉し、種子が実り、ということが繰り返されているということはただただ驚異です。例えば先に挙げたチャルメルソウやコチャルメルソウの花の場合、京都の山の中では必ずミカドシギキノコバエやフタマタキノコバエといった昆虫が花にやってきているのを観察することができるのですが、筑波実験植物園にはこれらの昆虫が生息しておらず、したがって花を訪れるこれらの昆虫の姿を見ることはできません。植物園で生きた植物を栽培し、観察することで様々なことが分かりますが、それでも本来の自生地でその植物の生き様を調べることは何ものにも代えがたい、かけがえのないものだと思い知らされます。
生物学は、対象とする生物が生態系の中でどのように他の要因と関わりながら生きているかを常に考えることで、真に魅力的な学問になるのだと思います。
●●● 展示・イベント情報 ●●●
特別展「超危険生物展 科学で挑む生き物の本気」
[開催期間]2026年3月14日(土)~6月14日(日)
※一部日程について、公式サイトより日時予約をお勧めします。
※会期等は変更になる場合がございます。
※開館時間、休館日、入場料、入場方法等の詳細は、公式サイトをご覧ください。
https://chokikenseibutsuten.jp/(リンクを新しいタブで開きます)
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※会期等は変更になる場合がございます。
※開館時間、休館日、入場料、入場方法等の詳細は、公式サイトをご覧ください。
https://chokikenseibutsuten.jp/(リンクを新しいタブで開きます)

企画展 生誕100年記念「かこさとしの科学絵本」
[開催期間]2026年3月24日(火)~6月14日(日)
https://www.kahaku.go.jp/tenji-event/nid00001839.html
https://www.kahaku.go.jp/tenji-event/nid00001839.html

自然の不思議-物理教室 「シャボン膜で探る!自然が選ぶ美しい形」<参加者募集中!>
協力団体展示「つくば夏の洋蘭展」<予告>
ラン栽培では日本屈指のつくば洋蘭会の会員が、丹精込めて育てた最新の園芸品種、珍しい野生種などを一堂に展示します。夏ならではの魅力あふれるランの世界をお楽しみください。
[開催期間]令和8年6月21日(日)~6月28日(日)
[開催期間]令和8年6月21日(日)~6月28日(日)
企画展「シジュウカラの社会」
[開催期間]令和8年4月25日(土)~7月5日(日)
https://ins.kahaku.go.jp/event/albums/abm.php?d=5061&f=abm00020225.pdf&n=web_shijuksra_meguro.pdf
https://ins.kahaku.go.jp/event/albums/abm.php?d=5061&f=abm00020225.pdf&n=web_shijuksra_meguro.pdf
●●● お知らせ ●●●
巡回展
当館では、展示物のキットを開発し、地域振興を目的に巡回展として全国の様々な施設に貸出を行っています。
- 仙台市科学館(宮城県)
[開催期間]2026年4月29日(水)~2026年6月21日(日)
https://www.kagakukan.sendai-c.ed.jp/(リンクを新しいタブで開きます)(仙台市科学館 公式サイト)
- 京都水族館(京都府)
[開催期間]2026年5月11日(月)~2026年6月14日(日)
https://www.kyoto-aquarium.com/(リンクを新しいタブで開きます)(京都水族館 公式サイト)
科博の「これから」を応援して下さい ~寄付・募金のお願い~
国立科学博物館では、研究活動への寄付や賛助会、インターネット上から募金できる「Web募金箱」など、多様な形でご支援を受け入れております。皆様からのご支援を活用し、調査・研究、標本・資料の収集・保管、展示・学習支援など、様々な博物館事業を推進しています。
是非とも、科博の「これから」を応援して下さい。
「寄付つき入館(園)券」販売中
2025年10月1日より、上野本館・筑波実験植物園・附属自然教育園にて、寄付つき入館(園)券を販売しています。ご来館、ご来園の際は、ぜひお買い求めください。
メール募集中
科博に関する思い出、展示の感想など皆様からのメールをお待ちしております。(ご感想などについては、このメールマガジンにて紹介させていただくことがあります。)宛先: magazine@kahaku.go.jp(リンクを新しいタブで開きます)
- 編集:国立科学博物館 学習支援部 広報・連携課
- 発行:国立科学博物館 東京都台東区上野公園7-20
- お問合せ:magazine@kahaku.go.jp
- 登録解除:ホームページの登録解除フォームに、ご登録いただいたメールアドレスをご入力ください。
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