先日開催された特別展「人体ー神秘への挑戦ー」で縄文人の復顔が展示されていたことを皆さん覚えているでしょうか?この復顔には、北海道礼文島の船泊遺跡から出土した縄文時代後期の女性人骨(23号)の高精度ゲノムを利用しました。実はこの研究では、男性(5号)の人骨からもゲノム分析を行っています。この分析から明らかとなったことのひとつが男性のY染色体の系統です。これまで、アイヌと沖縄で「D」と呼ばれる系統が特に高頻度(約88%と56%)*1であることから(本土日本人は30%)、縄文人はD系統に属していると予想はされていましたが、直接証明できずにいました。本研究の結果、5号男性はD系統であることがわかり、古代日本人のY染色体の系統を決めた初めての研究になりました。今回の研究成果は第70回人類学会大会で報告しました。大会の抄録でも見られますので是非ご覧ください。
*1: Tajima A., Hayami M., Tokunaga K., Juji T., Matsuo M. et al. (2004) Genetic origins of the Ainu inferred from combined DNA analyses of maternal and paternal lineages. Journal of Human Genetics, 49: 187-193.
(人類研究部:神澤秀明)