研究室コラム・更新履歴

1月16日

普通種であるジョロウグモの意外性
サツマニシキを捕食中のジョロウグモ

昨年開催された特別展昆虫MANIACでは、ジョロウグモが10年ほど前にアメリカに侵入し現地では外来種として話題になっていることを取り上げました。このクモは国内では広く一般的にみられる種、いわゆる普通種ですが、興味深い事例に遭遇したこともあります。上の写真は、道路脇に張った網に引っかかった、日本一美しい蛾として有名なサツマニシキを捕食しているところです。サツマニシキは実は毒を持っており、綺麗で目立つ外観は警告色とも考えられます。しかしジョロウグモには関係がないようです。こうした毒を持つ獲物に一体どのように対応しているのか気になります。
(動物研究部:奥村賢一)

1月9日

国際量子科学技術年に寄せて
仁科芳雄が長岡半太郎に宛てた手紙(1928年1月27日付)(当館所蔵)

あけましておめでとうございます。突然ですが、2025年は国連が宣言した「国際量子科学技術年」。現代のサイエンスの基盤の一つである「量子力学」と呼ばれる微視的世界の理論が、およそ100年前に建設されたことを記念するもので、各国で様々なイベントが企画されています。当館には、日本の物理学者たちがこの新理論とその構築に当時どのように反応し、あるいは関わったかを伝えるいくつかの資料があります。ここでご紹介するのは、仁科芳雄が1928年に長岡半太郎に宛てた手紙。微視的世界の探究を牽引したコペンハーゲンのニールス・ボーアのもとで、錚々たる物理学者らと肩を並べて研究した留学中の仁科は、学界を率いる長岡に、ボーアを日本に招待すべきだと力説しています(1937年に実現)。「日本の物理界が刺戟を受けて直接の利益ある」とともに「将来の日本の物理学を欧米に紹介しその親善を増し進歩を早める上に於て間接の利益ある事と存ぜられ候」などとその理由をあげています。新たな理論を伝え広めようとするだけでない、日本の物理学界の未来を思う仁科の熱意が伝わる手紙です。
(理工学研究部・河野洋人)

1月2日

小さな歯の持ち主は?
小型哺乳類は骨が化石として残りにくい分、小さいけど頑丈な歯が研究ツールになります。堆積物をふるいがけして集めた砂粒を顕微鏡で丹念に見るという気の遠くなるような作業で歯を探していきます。顕微鏡をのぞくと、鉱物の破片、木片、種子、魚の歯や骨、何か全くわからないものなど、たくさんの情報が目の中に飛び込んできます。ピンセットで粒をはじきながら探すので最初は乗り物酔いのようになることも。先日「この地層からは小さい哺乳類は出てこない」という前評判を覆し、ボランティアさんが小さな哺乳類の歯を探し当て(写真中央の下)、びっくりしました。ネズミ、コウモリ、モグラ、ハリネズミとも異なる変わった特徴があり、該当するような現生種が見当たらない...これが2度目のびっくりです。化石の年代はおよそ1800万年前。どんな動物の歯なのか、なんとか答えを探したいと思います。
(地学研究部:木村由莉)