研究室コラム・更新履歴

2月2日

熊本の古代人
昨年11月に、熊本県内出土の縄文時代から中世まで(約五千年間)の人骨51点のミトコンドリアDNA分析の成果を報告しました。同一地域でこれだけ時代幅のある人骨のDNA分析の成果が報告されたことはなく、同地域でどのような遺伝的変遷を辿ってきたかを示すことができました。それにより、中部九州の古代人は古墳時代も依然として縄文人の遺伝要素を多く残していることが明らかとなりました。現在は、より膨大な遺伝情報を含む核ゲノムの解析を進めています。
(人類研究部:神澤秀明)

1月26日

異分野コラボで広がる新たな研究
当館が収蔵するたくさんの葉化石に残された昆虫などの痕跡を調べることで、過去の昆虫と植物との関係を探ろうという研究プロジェクトを外部の昆虫研究者と始めています。写真は北海道北見市の約450万年前の地層から見つかったポプラの仲間の葉。矢印の先に、幼虫が葉の中を食べ進んでできたと思われる痕(潜葉痕)がみられます。注目しているのは鮮新世(533.3万年前〜258万年前)という時代。今よりも少し暖かかったこの時代は、これから迎えるであろう温暖な地球のモデルとして注目されているからです。どんな昆虫と関係があったのか、今とはどう違っていたのか、これからの研究の進展にご期待ください!
(地学研究部:矢部 淳)

1月19日

水草とザリガニと外来種問題
石の上にびっしりと生えている外来水草

アメリカザリガニが日本の水辺において深刻な問題となっていることをご存知でしょうか。在来の水草を捕食して消失させたり、生態系のバランスを崩すなどの問題が全国で生じているのです。当館の筑波実験植物園でも、水草の被害を最小限にするための努力をしているところですが、一方で、場合によっては水草が被害を与える側になるケースも近年急増しています。写真は、東京都内のとある河川の様子です。楕円球状の石の上にびっしりと生えているのは、グロッソスティグマ・エラチノイデスというオーストラリア原産の水草です。水草アクアリウムで人気の種類ですが、いつのまにか逃げ出し、河川一帯を覆うまでに広がっていることを昨年報告しました。在来の水草の減少原因は様々ですが、アメリカザリガニのような外来生物による消失と、外来水草による在来種の駆逐は、現在最も深刻な問題となっています。
(植物研究部:田中法生)

1月12日

深海魚の学名
バケダラ(Squalogadus modificatus)の液浸標本 (全長40cm、当館所蔵)

『深海魚コレクション エックス線CTで探る不思議な姿』を昨年8月に出版しました。この本では各種の学名の意味も解説しています。意味を論文にきちんと記す習慣が現在は根付いていますが、昔の論文では何故その学名にしたのか記載がなく、曖昧なものもあります。例えばバケダラ属の学名はスクワロガドゥスです。スクワロはツノザメ(サメの仲間)、ガドゥスはタラです。サメのようなタラとは一体なんでしょうか?体や膨らんだ頭を触るとザラザラしていますので、「サメ肌のタラ」という意味の可能性が高いと考えています。
(動物研究部:篠原現人)

1月5日

地球外物質の同位体比分析
表面電離型質量分析装置

元素の同位体の分析は様々な分野で利用されています。当館の研究成果は昨年開催した企画展でもご紹介しました。私の研究室で運用している表面電離型質量分析装置は、主に重い金属元素の同位体比分析ができます。特にストロンチウムやネオジムといった元素の同位体比から数百万年から数十億年という年代測定が可能です。また、隕石等の地球外物質の場合は、宇宙線照射による同位体比変動の記録を読み解き、その物質がどのように宇宙から地球に辿り着いたかの履歴が分かります。さらには星の中での元素合成の痕跡が残っている場合もあります。昨年は「はやぶさ2」初期分析チームの一員として、探査機が持ち帰った小惑星リュウグウの試料中のバリウムの同位体比分析をこの装置で行うことができました。初期分析チームによる研究成果は現在続々と学術誌に発表されています (参考論文 ※すべて英文)。
(理工学研究部:米田成一)