研究室コラム・更新履歴

7月19日

小さな珪藻化石を通して見える地球の環境変化
青木湖底泥に含まれる珪藻殻。直径12.6マイクロメートル(0.0126ミリメートル)。約1100万年前以降の北半球温帯域に繁栄する珪藻の仲間で、花弁状構造に囲まれたチューブを持つことが特徴。チューブは殻縁に13個、殻面に10個ある。

先月、私たちは、中新世の中期・後期境界ごろ(約1100万年前)に日本の湖沼において珪藻群集の入れ代わりが起こったこと、しかもそれは北半球の温帯域に共通であることを国際誌に発表しました。世界的な海水準の低下、造山運動と火山活動の活発化、気候の乾燥化、草本植生の拡大、モンスーンによる顕著な季節変化の成立。珪藻は湖水中にただよう小さな存在ですが、上述のような地球全体の環境変化と密接に関わってきたはずだと私たちは考えています。この考えに賛同する研究者から、さらなる情報交換を求められ、新たな共同研究を提案されています。研究と研究者の輪が広がっていく予感がします。
(地学研究部:齋藤めぐみ)

7月12日

栽培条件を当てる
“栽培困難水草”オテリア・メセンテリウム

植物園にとって植物の栽培はお手のもの、と言いたいところですが、野生種の多くは栽培方法が未知です。そのため特殊な環境や海外で採集した植物では、その生育環境や特徴から栽培方法の開発が必要です。筑波実験植物園では、そうした開発により、栽培困難種や日本初導入の水草なども栽培可能となりました。そんな折、「栽培が極めて難しい」とされる水草が手に入りました。プロのアクアリストが口々に「難しい」というところに、水草研究者としてのやる気スイッチが点き、文献を読み漁って生育環境を調べ、栽培担当の方と相談して環境をつくりました。その結果、ついに(おそらく)日本で初めて雌花が開花しました。生植物と花を得られることで、研究上の新知見や保全への貢献も期待できます。でもそれはそれとして、予測した栽培条件が的中したことが何ともうれしい瞬間でした。こちらの水草については植物園ブログ(6月13日)もぜひご覧ください。
(植物研究部:田中法生)

7月5日

小笠原の海の巻貝
小笠原は「東洋のガラパゴス」として知られるように、非常に多くの固有生物が生息しています。例えば陸産貝類は104種のうち98が固有種です。一方、海の動物に関しては、多くの種が浮遊幼生期をもつ(海流に流される)ことから、固有種は形成され難いとされてきました。私は当館のプロジェクトの一環として5年ほど小笠原の巻貝相について研究を進めてきましたが、この度その成果がまとまりました(国立科学博物館専報 第52巻)。扱ったのは古腹足類と呼ばれるグループで、小笠原から93種を記録しました。このうち、12種(全体の13%)はこの海域に固有の種と考えられ、海洋生物相からみても小笠原は特殊な地理的環境にあることが分かりました。今後は他の海域で比較研究を行い、固有化の仕組みを明らかにしていきたいと考えています。
(動物研究部:長谷川和範)