研究室コラム・更新履歴

9月12日

深海の鯨の骨から新種の貝を発見
栄養の乏しい深海底においては、浅海から沈んでくる動植物の遺骸は貴重な食糧源となります。中でも鯨の遺骸は、その周りに「鯨骨生物群集」と呼ばれる独特の生物群集を形成することで注目されています。しかし、広大な海洋の中で鯨の骨を探り当てることは大変に困難で、これまで自然状態では世界中で8例しか見つかっていません。
2013年に「しんかい6500」が、世界一周航海の際にブラジル沖の水深4204mで発見した世界最深の鯨骨群集は、多くの未知の生物を含むことで話題となりました。採集された41種の動物はすべて学名のない種と考えられ詳しい研究が進められていますが、私たちはこの度、その中の巻貝の1種を新種Rubyspira brasiliensisとして命名・記載しました。(Zootaxa掲載)
(動物研究部:長谷川和範)

9月5日

大都会の中の化石林を調べて
東京都やその近郊には意外にも数百万年前の林がいくつも化石となって残されている。この林は日本からその後絶滅した「メタセコイア」という針葉樹にいくつもの広葉樹種が加わったもので、周辺にはゾウやシカなどの動物が暮らしていた。調査中ふと周辺を見渡すと、あまりの環境の変化に、今更ながら大地の歴史の壮大さに感動を覚えてしまうのである。
(地学研究部:矢部 淳)

8月29日

冬の日差しを待ち続けるカラクサシダ
カラクサシダの胞子体(左)と前葉体(右)

沢の苔むした岩に生えるカラクサシダという小さなシダですが、夏に落葉するのも少し変わっています。胞子が発芽してできる前葉体は通常小さく短命ですが、カラクサシダでは長生きしてリボン状になります。面白いことに、カラクサシダが生えていないと思っていた場所で、前葉体だけがよく見つかるのです。どうやら、夏緑樹林だった場所に常緑のスギやヒノキを植えた結果、冬季の林床が暗くなってカラクサシダの胞子体(普通のシダのからだ)は育つことができなくなり、前葉体だけが、再び光を得られる日を何十年も待っているらしいのです。(本研究論文)
(植物研究部:海老原 淳)

8月22日

野外調査は天国
6月上旬に久しぶりに野外調査に出かけました。場所は北海道の古丹別地域。熊本大学の先生と学生と一緒に、川をじゃぶじゃぶ歩きながら、上部白亜系の蝦夷層群の化石を探しました。私は脊椎動物の化石を見つけようと、硬いノジュールを割り続けました。残念ながらめぼしいものは見つかりませんでしたが、涼しい初夏にコンピューターの前から離れて野外で過ごせただけでも大変充実した時間を過ごせました。
(地学研究部:對比地 孝亘)

8月15日

離島のクモを調査する
Callobius amamiensis アマミガケジグモ

空を飛んだり海を泳いだりすることのできない動物にとって離島は分布拡大が困難な隔離された地域で、生物地理学的な視点から大変魅力的です。他の生物同様にクモ類でも多くの島で固有種が確認されており、現在も度々新種の記載がなされています。私自身も昨年奄美大島で発見した個体を新種として発表しました。今年から来年にかけても琉球列島を中心に調査を行うため、新たな発見ができることを期待しています。
(動物研究部:奥村賢一)

8月8日

丸木舟の実験航海に成功
最初の日本列島人は、3万年以上前に、どうやって海を越えてこの土地へやってきたのか? その謎に迫る「3万年前の航海 徹底再現プロジェクト」で、本年7月に、丸木舟を漕いで台湾から与那国島に渡る実験航海に成功しました。太古の技術で海を渡ることの難しさが改めてわかり、自然と祖先たちへの尊敬の念が沸きました。クラウドファンディング等を通じてご協力いただいた大勢の皆様に、厚く御礼申し上げます。
(人類研究部:海部陽介)

8月1日

崖の下の花崗岩
展望台より足摺岬先端を望む

花崗岩は比較的低温のマグマが地下でゆっくりと冷え固まってできた岩石で、組成により、I型・S型・A型・M型の4つの型に分類されます。日本列島の花崗岩は唯一の例外を除き、大半のI型と少量のS型をからなります。その「唯一の例外」が写真の足摺岬で、通常は大陸でしか見られないとされるA型花崗岩からなります。それがなぜ日本のような変動帯の、しかも端っこに存在するのか、謎はまだ解けていません。
(地学研究部:堤 之恭)

7月25日

その土地の植物を紹介する
かつて桑畑として造成された斜面には、白山に自生する植物が植栽されていた

先日訪れた石川県の白山高山植物園では白山の植物を域外保全しながら、生育地を再現して展示しており、研究や植栽管理に役立つ知見を多く得ることができました。その際に改めて感じたのは、地域の植物を紹介することの重要性でした。私も旅先では、やはりその土地の植物が見たくなります。また筑波実験植物園の担当区では様々な日本の野生植物を展示していますが、日本の方以上に海外からのお客様が楽しまれている姿も目にします。近年は、日本各地の野生種をもとに園芸化されたアジサイなどの植物も積極的に導入し、紹介しています。これからも地域の植物やその魅力を発信して行きたいです。
(植物研究部:村井良徳)

7月18日

研究者が描いた魚の博物画
北日本産カレイ類の分類で有名な疋田豊治(ひきたとよじ;明治〜昭和初期の魚類学者)について3年前から調べている。論文以外に、生物標本・人物・風景のガラス乾板を多く残した人物でもある。数年前北海道大学から魚類などの博物画が約250枚保管されていることを聞いた。鉛筆描きの下絵、インクや水彩絵具を用いた完成品、さらに制作途中のものなどを1年以上かけて調査した。精緻に描かれた迫力のあるたくさんの原画から疋田(豊治)は優れた観察眼の持ち主であったことがわかった。
(動物研究部:篠原現人)

7月11日

今年は国際周期表年
IUPAC(国際純正応用化学連合)元素と同位体の周期表(PDF)

今年はロシアの化学者メンデレーエフが周期表を発表して150年になります。これを記念しユネスコは今年を国際周期表年と定めて祝うことになりました。私も委員を務める日本化学会原子量専門委員会ではこれにあわせ「IUPAC元素と同位体の周期表」を翻訳して配布しています英語のレポートWeb版)。メンデレーエフは原子量(元素の重さ)の順番に元素を並べ、テルルとヨウ素の順番は逆がよいことに気づきました。これは実はテルルには重さの違う同位体が存在するためです。上述の周期表では元素にどのような同位体があるのか円グラフで示しています。先週、2年に一度のIUPAC原子量委員会がベルリンで開かれ、同位体の割合を吟味し原子量を見直す作業に参加しました。
(理工学研究部:米田成一)

7月4日

科博モノグラフNo.50を出版
北海道・里平川地域から産出した白亜紀後期(約8000〜7500万年前)のアンモナイト37種(3新種を含む)を記載した論文を科博モノグラフから出版しました。実はこの地域には白亜紀の地層は分布していないとされていたため、アンモナイト研究者はだれもこの地域に注目していませんでした。2009年に共著者の友人がモノグラフの表紙に図示したアンモナイトを発見したのをきっかけに本格的な調査を開始しました。10年ほどかかりましたが、研究成果を出版することができました。
(地学研究部:重田康成)