研究室コラム・更新履歴

11月14日

神話の国出雲の古代人
昨年度から、島根県出雲市の猪目洞窟遺跡から出土した古墳時代とされる人骨のDNA分析を行っています。古代には黄泉の国につながると信じられていたこの洞窟から、1948年の漁港改修工事中に多数の人骨が発見されました。この人骨について報告した大谷ら(1949)はその保存状態の良さについても触れており、「餘りにも保存良好で、比較的新しく埋沒したのではないかと疑わしめる程である」と表現しました。現在はDNAを分析中ですが、これほど保存状態が良好であれば、得られるDNA情報量もきっと素晴らしいのではないか。出てくる結果を楽しみながら解析を進めています。
大谷從二、大國 一雄、池田 次郎.出雲國猪目洞穴遺跡概報.人類學雜誌.1949年61巻1号 p.1-6.
(人類研究部:神澤秀明)

11月7日

ラフレシア科の新種を発表!
発見されたラフレシア科サプリア属の新種Sapria myanmarensis(撮影:Mu Mu Aung)

当館で実施している分野横断的な総合研究のひとつである「ミャンマーを中心とする東南アジアの生物インベントリー」の一連の調査で、ミャンマー中北部からラフレシア科のサプリア属の新種が見つかりました。ラフレシア科は、ブドウ科ミツバカズラ属の根に寄生する寄生植物です。インドから東南アジア大陸部に分布するサプリア属は、これまで3種しか知られていませんでした。今回の4種目の新種は、その国名をとり「サプリア・ミャンマレンシス」と名付けて発表しました。現地では昔から認識していたようで、現地語で「山に咲くハスの花」と呼んでいるとのこと。ミャンマーの人の感性が窺えるネーミングに感心しました。
(植物研究部:田中伸幸)

10月31日

九州山地のモグラ
宮崎で捕獲したコウベモグラ

本州中部地方を境として東西にそれぞれ小型のアズマモグラと大型のコウベモグラという2種のモグラが分布しますが、コウベモグラが少しずつ東へと押し込みながら分布を拡大しているという「モグラ合戦」の話は昔から知られています。ところがコウベモグラの分布域である西日本でも山地にはアズマモグラが孤立個体群として分布する場所があります。九州ではアズマモグラは未発見ですが、本当にいないのか疑問に思って、宮崎県の標高1500m地点で調査を行いました。ところが捕獲できたのはコウベモグラで、非常に小型の個体でした。やはり九州にアズマモグラはいないのか?ほかの場所も探ってみようと思います。
(動物研究部:川田伸一郎)

10月24日

流星群の母天体を探る
函館中部高校の口径30cm反射望遠鏡

ぎょしゃ座の12等星の前を小惑星フェートンが横切り、星の光を0.5秒だけ隠すという現象(恒星食)が計算により予報されました。これが見られるのは北海道の函館市を通る幅5kmほどの帯状の地域です。フェートンはふたご座流星群の元となった天体(母天体)と考えられている小惑星です。フェートンの軌道や大きさについて貴重な情報を得るために、私たちは8月22日午前3時、写真の函館中部高校ほか15地点に望遠鏡を設置して観測にのぞみました。天候不良のため今回は残念ながらその現象を捉えることはできませんでしたが、次の機会にむけてさらなる準備を行っているところです。
(理工学研究部:洞口俊博)

10月17日

新鉱物の宝庫
微斜長石(淡緑色)、エジリン(黒色)、レアアースを含むユーディアル石(紅色)などからなる岩石。左右約20cm

ロシア北西部のコラ半島で7月に鉱物の国際会議があり、参加してきました。北極圏に位置し、冬は厳しい寒さに見舞われる場所ですが、コラ半島は地球科学者にとって、特別な場所です。ここには研究目的で掘られた深さ12kmの掘削坑があり、人類が掘った最も深い穴として知られています。また、アルカリ深成岩類という珍しい岩石が大規模に露出し、その中にはレアアース鉱物が多く含まれるため、重要なレアアース資源となっています。特殊な地質ゆえ、これまでに240種類以上の新種の鉱物が発見されています。鉱産資源の国外持ち出しは制限されているのですが、さらなる新鉱物発見を夢みて、許可を取って少量のサンプルを持ち帰りました。
(地学研究部:門馬綱一)

10月10日

フジマリモの生息調査を行っています
今年は山中湖村教育委員会と共同でフジマリモ(*1,*2)の生息調査を行っています。9月初めに予備の潜水調査を行いました。調査結果は解析中ですが、水温が25度と高いためか、生息状況が良くありませんでした。次は厳寒期に潜水調査を行います。この調査は5年ごとの実施で、私が関わるのは2回目です。年をとり介護をしてもらうようになっても潜水調査をしたいと、あちこちで豪語しているのですが、果たしていつまで調査できるのか正直少し不安です。
(植物研究部:辻 彰洋)

10月3日

世界でいちばん絶滅が心配されているサギ
ブータンには、ヒマラヤ山脈の東麓のみに分布し、世界でも250羽に満たないサギ科の絶滅危惧種シロハラサギ(Ardea insignis)がいます。この7月の調査初日に、崖の上から遥か下方を見下ろしたところ、双眼鏡で見ても米粒ほどの大きさで、川の中の大きな岩の上に立つ首の長い鳥の黒い影を何とか見つけることができました。その数日後、幸運にも中州に来たシロハラサギが小魚を捕る様子を近くの川岸から観察できました。
(動物研究部:西海 功)