研究室コラム・更新履歴

9月23日

コロナ禍の昆虫研究
吊下げ式ライトトラップ(左)とそれによって採集されたアリヅカムシの一部(右)

かれこれこの1年半の間、新型コロナウイルス感染症の蔓延でわたしたちは、外出制限やマスクの着用などの不自由な暮らしを強いられています。昆虫の研究活動への影響も大きく、特に外国訪問の制限は大きな痛手です。しかし私たち昆虫研究者は採集活動も論文執筆も継続しています。アリヅカムシの採集では、短期で成果を上げられるように、4ワットの電池式蛍光灯を付けた吊下げ式ライトトラップを駆使して採集効率を上げています。
(動物研究部:野村周平)

9月16日

手の込んだ石
左がルヴァロア剥片、右がムステリアン型尖頭器。

人類化石の発掘調査では、様々なものが出土します。特に人類が石器を作り始めて以降の化石産出地では、出土する遺物の大半は石器になります。はじめのうちは石か石器か見分けるのも大変なのですが、徐々に慣れてくると様々な技法で石器が作られていることがわかってきます。どのような人類が、どういう意図をもって手の込んだ加工を施していたのか、いろいろと思いを巡らせながら石器を眺めるのは非常に楽しいものです。
(人類研究部:森田 航)

9月9日

オープン!!南方熊楠の電子展示!
南方熊楠をご存知ですか。稀代の隠花植物(花の咲かない植物)の蒐集(しゅうしゅう) 家にして、破天荒な人生を送った人物としても知られています。科博には、熊楠が集めたきのこの図譜が数千枚保管されていて、データベース化が進められています。このたび、その一部を電子展示として「南方熊楠デジタルアーカイブ」を公開しました。 いろいろ見られるけど、検索しなくてはいけないデータベースと異なり、私のご案内と解説で、各種の資料を見ていただけます。みなさんも、熊楠の迷宮を訪ねてみませんか。
(植物研究部:細矢 剛)

9月2日

生物の「種」とは?
「珍しいモズがいる」と知人から聞いて見に行くと、確かにいました(写真)。「これは日本にはいない珍しい種。迷行記録だ!」と写真を撮ってきましたが、よく見るとどうもおかしい。図鑑を調べ、モズ類の専門家にもきいてみるとどうやら種間雑種のようです。論文を精査すると、ユーラシア大陸では近縁の3種が互いに交雑していて、連続的に中間的な個体がいるとのこと。「この3種は別々の種と言えるのか」という疑問もわきますが、こういう状態も自然界ではあり得ること。残念ながらDNA試料を得て分析する機会はありませんでしたが、モズたちの進化の歴史に思いを馳せた一件でした。
(動物研究部:濱尾章二)

8月26日

今日もカビと埃にまみれて
炭素ガスによる燻蒸を行う受け入れ資料

科学・技術史グループでは、科学者・技術者個人にまつわる資料を収集・保存しています。具体的には研究ノートや書簡、実験機器などですが、それらは長い年月に渡り条件の悪いところに置かれて、埃にまみれていたり、カビや虫の被害を受けていることが多いです。これらをそのまま資料庫内で開架して置くと、資料庫内を汚損し他の資料にも悪影響が及ぶので、まず最初に燻蒸などの処理を行います。その後、埃やカビを払いつつ、一点一点状態を確認しながら、最初の資料リストを作成します。そして目録の作成に向け、内容の読み取り、確認、資料に関係する情報の調査や項目の見直し作業を進めていきます。科学・技術史の研究活動にとって、このような時間のかかるとても地道な作業が重要です。
(理工学研究部:前島正裕)

8月19日

新型コロナウイルスの影響
翡翠 かつて「みどり館」に展示してあったが、新館(地球館)への建て替えに伴い、収蔵庫に眠っている。来春の特別展にて展示公開の予定。

調査や研究集会といった出張がすっかり無くなりました。それでも、物流や通信サービスに支えられ、できることから研究は進んでいます。しかし、ほとんど研究室か自宅に籠もってデスクワークなので、気がつかないうちに脚力が衰えてしまいました。来年は世界鉱物年2022です。特別展「宝石〜地球がうみだすキセキ〜」 の準備も佳境に入りました。アフターコロナに備え、エレベーターは使わず、階段の昇降で筋力の回復に勤しんでいます。
(地学研究部:宮脇律郎)

8月12日

世界の植物の深層に迫る歩みがスタート
林床で咲くムカゴサイシン。高さ3-10cmほどの多年草。都市公園のような自然度の低い環境を好む不思議な絶滅危惧種の生態の謎を明らかにしました。

英国生態学会の学術誌Journal of Ecologyに、ラン科絶滅危惧種ムカゴサイシンの生物学的特性を解明した論文を発表しました。 国内外の多くの研究者と20年あまり続けたプロジェクトの総括です。同誌には英国の植物の種ごとの特性を明らかにすることを目的に80年続くシリーズBiological Flora of the British Islesがあります。これを世界の植物に広げたInternational Biological Floraがスタートし、私たちの論文は記念すべき第1号になりました。いきさつなどは英国生態学会のブログをご覧ください。
(植物研究部:遊川知久)

8月5日

シラユキヒメヒトデ
新種のシラユキヒメヒトデ
Henricia margarethae Kobayashi, Kohtsuka, and Fujita, 2021)


相模湾と浦賀水道の深海から採集されたヒメヒトデ属の新種を発表しました。 ヒメヒトデ属は比較的細長い腕をもっていて、その腕を丸めて部屋を作りその中で自分の子を保育するという、とても興味深い習性があり、研究室ではこの仲間の系統分類や生態の研究に力を入れています。ヒメヒトデ属の多くの種は赤色や橙色なのですが、この新種は色が薄く白いため、グリム童話の白雪姫になぞらえてシラユキヒメヒトデと名付けました。
(動物研究部:藤田敏彦)

7月29日

コロナに負けず国際共同研究しています
アルゼンチン国立自然科学博物館のFernando Novas博士(左)、Marcelo Isasiさんと彼がクリーニングしている化石。

昨年5月のこのコーナーで、2020年3月に発掘を中断したアルゼンチン・パタゴニア地方の白亜紀末の竜脚類恐竜化石についてお伝えしました。あの化石はまだ山中に置いてあります。ブエノスアイレスの博物館の研究員たちもまだ自宅で研究作業をするのが基本です。持ち帰った化石のクリーニングが進むたびに、アルゼンチンとインターネットで繋いで、化石を見ながら一緒に論文のための原稿の執筆をしたりしています。先日は、三密をさけるために博物館近くのカフェのオープンスペースからインターネットでクリーニングの進捗状況を知らせてくれました。この化石が何なのか、お楽しみにー。
(標本資料センター:真鍋 真)

7月22日

渋沢栄一ゆかりの資料
NHKの今年の大河ドラマの主人公は渋沢栄一との事。実は当館では渋沢ゆかりの資料をいくつか所蔵しています。筆頭は、渋沢の喜寿を祝って建てられた誠之堂の煉瓦。世田谷から深谷へ解体・移築された際に採取されました。渋沢が起こした会社の一つに日本煉瓦製造株式会社があります。ここで作られた煉瓦は戦前の日本の建設業を大いに支えました。国宝・迎賓館赤坂離宮で使われた煉瓦も、この会社の製造したもので、当館で所蔵しています。最後は、渋沢が設立に関わった第一国立銀行の建築模型。洋風に似て非なる建物と後の建築史研究者に擬洋風建築と名付けられたこの建物は、明治の東京名所として、数々の錦絵に描かれました。ドラマにあやかり、これらの資料を展示できないかとも考えましたが、煉瓦だけでは展示にならず、こっそりこの場でお披露目いたします。
(理工学研究部:久保田稔男)

7月15日

砂浜はハチのすみか
砂浜で出会ったアリバチの一種

海辺の砂浜でハチを探してみました。すると、ハマヒルガオやハマエンドウといった砂浜で花を咲かせる海浜植物のまわりで、たくさんのハチに出会うことができました。なかでもおもしろかったのは、砂浜を歩き回る「アリバチ」という変わったハチとの出会いでした。アリのような姿をしたこのハチは、砂浜に掘られた他のハチの巣穴 に潜り込み、巣の中の幼虫に卵を産みつける、といわれています。どうやら海辺の砂浜は、さまざまなハチにとって大事なすみかとなっているようです。
(動物研究部:井手竜也)

7月8日

シカ化石の年代を調べる
ツヅピスキアブ遺跡の調査区。写真奥に洞窟の入り口が見える。

琉球列島にいた数種のシカ類は、各島でヒトの渡来直後(3万〜3万5千年前)に絶滅したようなのですが、宮古島のツヅピスキアブ遺跡では1万年前の地層からシカ化石が見つかりました。宮古島だけシカが生き延びていたのか疑問に思い、私たちはこの地層から出たシカとイノシシの化石に含まれる数種の元素の量を調べてみました。すると、シカとイノシシでは元素の含量が異なり、イノシシは1万年前、シカ化石はそれより古いことがわかりました。洞窟の堆積は複雑で、古い化石と新しい化石が混ざって埋まっていることがしばしばあります。これから堆積プロセスの研究やシカの年代測定を進め、宮古島でのシカ絶滅とヒト渡来の関係を探っていく計画です。
(人類研究部:藤田祐樹)

7月1日

キミは水深6,500 mの世界を知っているのか!
真っ暗で圧力の高い深い海の底に、今や人間は潜っていくことができます。海洋研究開発機構が所有する調査船「しんかい6500」は、水深6,500 mまで人間を乗せて潜ることができます。開催中の企画展「日本の海洋調査への挑戦とあゆみ」(地球館2階常設展示室内、2022/3/21まで)では、「しんかい6500」の1/2模型とその初代プロペラの実物を展示しています。現在、このプロペラは科博に寄贈されていますが、深さ6,500 m の世界を知っているのだと思うと、なにやらワクワクしませんか?皆様も展示をご覧になって、人類最後のフロンティアと言われる深海の世界に思いを馳せてみてください。
(理工学研究部:室谷智子)