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7月17日
都心の公園で新種の藻を発見
北の丸公園(千代田区)は、徳川家康が江戸幕府を開いて間もない慶長11〜12(1606〜1607)年に江戸城の内郭として増築された「北の丸」の場所にあたります。明治以降は近衛師団の駐屯地になりましたが、終戦後から公園利用が計画され、昭和44(1969)年に開園して現在にいたります。そんな北の丸公園にある滝を調査したところ、滝壺の岩盤の上に毛筆の筆先のような藻が生えていました(左の写真)。持ち帰って顕微鏡で観察すると、単列細胞の藻体に無性の生殖器官である胞子嚢(右の写真)を持つ、紅藻植物門カワモズク目の胞子体世代と分かりました。遺伝子解析の結果、カワモズク科チャイロカワモズク属の新種と判明し、鹿児島大学の鈴木雅大先生との共著で発表しました(
Kitayama & Suzuki, 2024
)。江戸城北の丸の跡地に生育しているので、「
Sheathia yedoensis
キタノマルカワモズク」と命名。いまのところ日本固有種です。淡水藻のカワモズク類は清浄な水流を好むため、大部分の種が絶滅危惧種ですが、都市化の著しい東京都心部からまだ新種が見つかるとは驚きです。
(植物研究部: 北山太樹)
7月10日
20分の1万
僕の研究室では陸生哺乳類の研究のため、普段から標本を作っています。本日6月26日、作成している標本の個体処理番号が10000番を突破しました。また一つ目標を達成した感があります。僕が当館に就職したのは2005年の4月なので、今年がちょうど20年目です。前任者から引き継いだ個体処理番号は900番台だったので、およそ9000個体以上のなにがしかを解体して標本にしてきたことになります。ただし僕は自分が採集したモグラなどはSIKを冠する、個体処理番号とは異なる自分のフィールド番号をつけていて、それが1000ちょっとあるので、大雑把に言って1万点くらいの死体を処理してきたと考えてよいでしょう。年間500個体程度で1日なら1〜2個体という計算ですが、日々継続するということは大切な事だとあらためて感じました。
(動物研究部:川田伸一郎)
7月3日
化石の産状を保存する大切さ
東北地方の某所で30年ほど前に発見され収蔵していた化石の研究を進めています。化石を採集したらまずクリーニング。つまり、石や堆積物を除去して生物の特徴を調べられるようにするのが常識ですが、写真の標本は地層を立体的に切り出した状態で、化石が見つかった当時の様子を保存しています。写真の面は地層面(=水平面)で、水流で洗われてさまざまな果実や木材が散在しているのがわかります。化石が地層から見つかる状態を“産状”と言いますが、実はこれが化石研究にとても大事で、この標本の場合、化石となった植物の各部がいちどきにあまり選別されずに流されてたまったことが推測できます。こうした情報は、その植物がかつてどんな場所に生えていたかを知るのに欠かせません。クリーニングが済んだ標本だけからはわからない、こうした情報をいかに残すか。その大事さを改めて考えさせられました。
(生命史研究部:矢部 淳)