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5月1日
遺跡の土壌DNAも調べたい
近年、遺跡の土壌に含まれるDNAを分析する研究が世界中で精力的に進められています。古いものですと、南シベリアのデニソワ洞窟の25万年前の土壌から、旧人のデニソワ人のDNAが検出されています。このように、遺跡の土壌DNAを分析することで古代人のDNAが検出されることもあれば、当時の環境を復元するための情報が得られることもあります。私自身も関心はありましたが、これまでは人骨のDNAを分析するばかりで、土壌まで分析することはありませんでした。ただ、日本のような酸性土壌では遺跡に人骨はほとんど残らないため、土壌からヒトDNAを検出することができるとしたら、これまで人骨が残存せず、DNA分析の対象外となっていた遺跡からも、DNA情報が得られるかもしれません。他にも、貴重な人骨を直接削って分析する許可が得られないケースもこれまでありましたが、人骨に付着する土壌のDNA分析で結果が出せるのならば、今後に分析できる試料や研究の幅も広がると思いました。しかし、土壌は酵素反応を阻害する多量の腐食物質を含むため、実は綺麗にDNAのみを抽出すること自体が難しいとされています。そこでまずは、試しに筑波研究施設敷地内の土壌を少々拝借し、本当にDNAが取れるのかを確認したところ、わりと綺麗に抽出することができました。環境ごとに得られるDNA量にも違いがあるなど、新たな気づきもありました。今は、実際に人骨に付着した土壌のDNAを抽出しており、そこからその人骨と同じDNAが検出されるのか、今から結果が楽しみです。これがうまくいけば、まずは古墳時代の石棺墓に残る土壌のDNAを分析してみたいな、と夢はどんどん広がります。
(生命史研究部:神澤秀明)
4月24日
瓢箪から駒!?
発掘された「隠岐馬」の左右下顎骨と臼歯列
2年ほど前から、島根県隠岐諸島の一つである西ノ島で、明治期のニホンアシカ猟で海岸に葬られた遺骸の発見を目指した発掘調査を行なっています。この調査は国立科学博物館のみならず、地元西ノ島町教育委員会、隠岐ジオパーク推進機構の協力を得て、私の兼任している筑波大学大学院の院生や隠岐の高校生ボランティアの力も借りて発掘を進めているものです。多くの方々の協力のもと、目当てのニホンアシカに加えて思いもよらない動物の遺骸を発見しました。それは、幻の「隠岐馬」です。隠岐馬は、昭和初期まで隠岐諸島で飼育されていた日本古来の在来馬の一品種で、現在ではもうその姿を見ることはなく、骨格標本は島根大学に一体が残されているだけです。小さな漁港の片隅での思いもよらない発見で、近年では放牧馬の里としても人気の西ノ島に改めて熱い注目が集まっています。
(生命史研究部:甲能直樹)
4月17日
コケムシという甲虫を知っていますか?
日本産コケムシ3種とアリヅカムシ(右端)の比較。左からムナビロコケムシ、
Euconnus oitaensis
(和名なし)ホロタイプ、シリブトヒメコケムシ、トサオノヒゲアリヅカムシ。スケールは0.5 mm。
私はハネカクシ科の一亜科である微小甲虫のアリヅカムシ類を専門に研究していますが、アリヅカムシとよく間違えられる甲虫にコケムシ類があります。コケムシというと海生の無脊椎動物にも同じ名前の一群がありますが、昆虫のコケムシは、ほとんどの種が体長2ミリ以下で、森の土や朽ち木の中にすむハネカクシ科の甲虫です。アリヅカムシとの違いは、上翅(前ばね)が長く、腹部全体をおおっている点です。コケムシは日本全土におよそ130種が知られており、まだ名前のついていない種が多数あります。生態の面でもまだほとんど解明されていません。今後日本での研究が進むことを期待しています。
(動物研究部:野村周平)
4月10日
「硬派」な白保4号さん
白保竿根田原洞穴遺跡出土4号人骨
沖縄県立埋蔵文化財センター所蔵
2025年3月から開催中の特別展「
古代DNA―日本人のきた道−
」では、日本各地から出土した古人骨が展示されています。中でも、沖縄の石垣島の「白保竿根田原洞穴遺跡」から出土した4号人骨は、約2万7千年前の旧石器時代に生きていた中年男性で、本展示の見どころの一つと言えます。この人物は、仰向けで膝をつよく曲げた状態(仰臥屈葬位)で発見されています。実際にその姿勢をしてみると、左右に横倒ししたり(側臥屈葬位)、足が伸びたり(仰臥伸展位)してしまい、なかなか安定しづらいことがわかります。そのため、あえてこの姿勢にして埋葬された可能性が指摘されており、もしそうなら日本最古の「埋葬」された人物となります。今回の展示にあたり、彼の骨に触る機会があったのですが、間違いなく今回展示されている古人骨標本の中で最も重く硬い骨でした。残念ながら、「2万7千年の重み」を体感して頂くことはできませんが、実際にご覧頂ければその存在感を感じて頂けると思います。もちろん、彼だけではなく、古代DNAからわかる最新の知見や各時代の特徴的な人骨などを展示しておりますので、是非上野の特別展会場までいらしてください。
(生命史研究部:坂上和弘)
4月3日
日本原子力研究開発機構での岩石分析
日本原子力研究開発機構の試験研究用等原子炉設備(JRR-3)に設置されている即発ガンマ線分析装置
私は2〜3ヶ月に1度の頻度で茨城県那珂郡東海村にある日本原子力研究開発機構へ行き、岩石の化学分析を行っています。日本原子力研究開発機構には世界に数台しか存在しない即発ガンマ線分析装置があり、この装置を用いて岩石中に微量しか含まれていないホウ素(化学式:B)の量を分析しているのです。地球においてホウ素は海洋底に最も多量に含まれ、これが日本海溝などから深さ100kmを超える地球深部へ沈み込んだ後、マグマ中に融け込んで上昇し、火山噴火というかたちで少量が地表へ戻って来ます。私はこのホウ素をトレーサー(追跡子)として地球深部での物質循環の量を明らかにしたいと考えています。
(理学研究部:佐野貴司)