2008-04-01

桜−身近な花をどれだけ知っていますか? (協力:植物研究部 秋山忍)


1本のサクラの大きな恩恵

 花を愛でるほかにもサクラは,わたしたちに多くの楽しみ,恩恵を与えてくれています。
 サクラの枝・皮・葉・花びらはそれぞれ染色に使えます。花と同じ桜色をつくり出すには,花びらではなく花が咲く直前の樹皮を使うのが良いと言われます。
 桜餅は関東と関西で作り方,形状が異なりますが,いずれも塩漬けにしたオオシマザクラの葉が使われています。オオシマザクラの葉は柔らかく毛がなく,よい香りがし,餅と一緒にそのまま食べることもできます。
 桜の樹皮は漢方では桜皮(おうひ)といい,ヤマザクラやソメイヨシノの樹皮を天日で乾燥させて用います。咳止め,痰きり,蕁麻疹の治療などに使われます。

 サクラの恩恵を受けているのは,人間ばかりではありません。
 花にはアゲハチョウやギフチョウ,セイヨウミツバチ,メジロなどが吸蜜に訪れます。葉を利用する生物は非常に多く,幼虫時代に葉を食べる蛾の仲間だけで130種類を超えています。その中には開張10センチにもなる大型のクスサンや,ミノムシとして知られるオオミノガ・チャミノガ,卵の殻のような丸く硬い繭をつくるイラガのなかまや,シャクトリムシとも呼ばれるシャクガのなかまも含まれています。ナナフシやキリギリスは幼虫,成虫ともにサクラの葉を食べます。カメムシやカイガラムシ,アワフキムシのなかまは葉や枝の汁を吸います。
 サクラの枝,幹にはノキシノブなどのシダ類が着生し,ナラタケ,マンネンタケなどのキノコも生えます。うどん粉病菌などサクラにとって好ましくない菌類に寄生されることもあります。
 一方でこのようなサクラを利用する生物たちを利用して生きる生物もいます。カマキリやカリバチのなかまはサクラに来る昆虫を食べ,テントウムシの一種キイロテントウはうどん粉病菌を食べます。
 サクラを利用する生物は現在分かっているだけで250種以上と言われ,現在でも新たな種の発見が続いています。これらの生物が互いにどう関係し合っているのかについても完全には解明されていません。

 1本の木を取り巻く小さな生物たちの多様な生態系は,何もサクラに限った話ではありません。わたしたちに身近な,よく知られていると思われている植物にも未だ多くの見知らぬ生物が息づいているかも知れないのです。

写真:地球館1階 サクラを利用する生きものたち「あなたはどれだけ知っていますか?」