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絵画における光

 白色光線が物体に当たると、乱反射せずに、正反射することがある。鏡面反射ともいい、光源そのものが反射して見える。この正反射の現象を絵画に導入している場合がある。金箔を画面に貼り、平滑に磨いて、あたかも画面から光が発しているみたいに見せる方法である。西洋画においては、聖像画(イコン)に多い方法である。初期ルネッサンス絵画における聖母子像など、人物の背景に金箔が貼り込められ、神の象徴として光輪が彫り込まれる。正面から見ると、あたかも画面から後光が放射しているように見える。
 盛期ルネッサンスをへてバロックにかけて、絵画は正反射を利用する金箔による背景がなくなり、「聖なる世界」の表現から、現実の視覚を重視する「俗なる世界」へと踏み込んでいく。その結果、遠近法と明暗法が展開する。物自体の量感(ボリューム)を出すために、光が当たっている明部と当たっていない陰影部を描き、さらには物自体を取り囲んでいる空間そのものを明暗法で描き出そうとしている。いいかえれば、光を画家みずからが画面の中で想像しているのである。

黄金背景テンペラ画の制作手順

 シモーネ・マルティーニ
 『受胎告知』の中の『聖ガブリエル』(1333年)模写
  木島隆康 1989(平成元)年

 黄金背景テンペラ画は、中世から初期ルネッサンス時代にかけて主にイタリアで栄えた絵画手法。金色を背景に聖像を配し、金地に刻んだ装飾模様は光の装飾効果としてより一層宗教心を高める役割をする。
1.板の木地:当時は主にポプラ材を用いた(見本はオーク材)。
2.膠水を塗る。
3.麻布を貼る。
4.石膏を塗る。
5.平らに削り、装飾のレリーフを作る。
6.金箔を貼る前にとのこを塗る。
7.とのこを磨く。
8.水を塗った上に金箔を置く。
9.金箔を磨いて艶を出す。
10.装飾に必要な箇所に刻印を打ち、金襴の効果を出す。刻印は光のつぶとなり、刻印の線はまばゆき光の線となる。彩色箇所は基本的に金箔を剥がすが、金箔の上に描く場合もある。 11.完成:テンペラ画の絵具は卵黄と顔料を混ぜ合わせて絵具として描く。

 


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