ハネカクシ談話会写真集16
―野村周平ニュージーランド採集行スペシャル―
Photo Album of the Staphylinidological Society of Japan, No. 16
(special version on the collecting tour to New Zealand by Nomura, 31 Oct. -13. Nov. 2005)


=SORRY! JAPANESE ONLY=



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ニュージーランド蟻塚採集紀行



 野村は、2005年11月21〜30日、国立科学博物館とランドケア研究所ニュージーランド節足動物コレクション(NZAC)との共同事業により、ニュージーランドを訪れ、アリヅカムシなど土壌甲虫類の採集を行うことができた。以下にその様子を報告する。この採集行についてはすでに、ハネカクシ談話会ニュース第28号1−5頁に「エニグマと、桜花と出遭う11月―ニュージーランドアリヅカムシ採集紀行―」として報告しており、一部内容や文章表現が重複する点があるが、ご勘弁いただきたい。

 旅行日程について、以下に示す。

31.Oct-2.Nov 2005:
AK, Auckland, NZAC

3 Nov 2005:
CL, Coromandel, Square Kauri Tk
CL, Coromandel, Coroglen-Tapu Summit
CL, Coromandel, Sailors Grave
CL, Coromandel, Twin Kauri Tk
CL, Coromandel, Kirikiri Saddle

4 Nov 2005:
BP, Kaimai Ra, Lindeman lookout, end of Lindeman Rd,

5 Nov 2005:
BP, Kaimai Ra, Te Tuhi Tk, (between N/S Tk & Leyland O’Brien Tk)
BP, Mt Te Aroha, at gate

6 Nov 2005:
AK, Waitakere Ra

7 Nov 2005:
NC, Arthurs Pass, Klondyke Corner, (FIT setting)
NC, Arthurs Pass, Baeleys Tk

8 Nov 2005:
NC, Arthurs Pass, Jacks Hut
NC, Arthurs Pass, Kellys Creek
NC, Arthurs Pass, Taipo Valley Tk, 2 km RT73(FIT setting)

9 Nov 2005:
WD, L. Mahinapua
WD, Ross, Totara Forest, Mikonui Tk

10 Nov 2005:
WD, Hokitika Beach
BR, Greymouth, Grandjeans Tk
BR, Barrytown, Croesus Tk

11 Nov 2005:
NC, Arthurs Pass, Taipo Valley Tk, 2 km RT73 (FIT collecting)
BR, Paparoa NP, 2km N.E. Punakaiki, Bullock Ck Rd, 50m

12 Nov 2005:
NC, Arthurs Pass, Klondyke Corner, (FIT collecting)

※地名の前に大文字2字で示されている記号は、Crosby et al.(1998など)による生物地理学的な区画を示す。



 日曜日午後、いよいよ出発の便に乗り込むため成田へ向かう。品川駅で、家にニュージーランドドル(NZD)を置き忘れて出かけたことに気づき愕然。カードで現金を下ろしてNZDに交換したが、両替手数料1万円以上の損害。ガックシ。さらに災難は続く。チェックインしようとすると、エクセスをとられた(1.5万円)。NZ航空は重量超過に厳しいようだ。気をつけよう。機内に乗り込むと結構込んでいる。離陸してまもなく、気流のせいで激しく揺れ、子供が怖がって泣いていた。本を読んだり、映画を見たりして過ごす。やがて10時間の旅を終え、オークランドに到着。空港を出ると見覚えのある顔が近づいてきた。Richだ。久闊を叙してパーキングへ向かう。彼の車は白い古めのトヨタ車で、サイドミラーにくもの巣が張っていた。彼の家と職場を案内してもらう。

 それから数日、Richの職場であるNZAC(New Zealand Arthropod Collection, Landcare Research)でNZ産アリヅカムシ標本のチェックと借り出し、文献の複写をやった。すべてがよく整理されており、必要だったものはおよそ完全にそろったようだ。近日発売の”Handbook of Zoology”を一足先に見せてもらったり、いくつかの文献も寄贈してもらって大収穫だった。これらの文献や借用標本はあとで送ってもらうことにする。

 オークランドではなんともありがたいことに、Richの自宅に泊めてもらった。彼の家は昔彼の職場があったアルバート山の中腹にあり、エレナ夫人と2人で住んでいる。日曜日にはRich自らバーベキューを焼いてくれたり、夫人の手作り料理と名産の白ワインで歓待してもらった。恐れ多いことだ。一度彼の車でアルバート山の周囲をぐるりと回って山頂まで連れて行ってもらった。山頂は公園になっており、日本から移植されたとおぼしきソメイヨシノがそろそろ散りかけという風情であった。ここからはオークランドの町並みを一望の下に見渡すことができる。




Left above: New Zealand Arthropod Collection (NZAC), Landcare Research, Auckland;
right above: a collection room of NZAC
Left below: a view from Mt. Albert; Auckland city from Mt. Albert.


 11月3日、いよいよ採集日程となり心が弾む。オークランド空港で赤の三菱車をレンタルして、Coromandel半島へ向かう。国道1号線から2号線へ進み、1時間半ほどでThamesという町へ。このあたりは河口に面しており、背の低いマングローブが広がっている。山も針葉樹があるかと思うと、ヘゴの群落があったりして、やはり日本とはだいぶ違うようだ。Thamesの街中で昼食後、とりあえずホテルにチェックインすることにした。Waiomuという海岸にある宿は波打ち際から数mの近さで、Richはえらくお気に入りである。

 荷物を置いて採集へ向かう。最初に行ったのはSquare Kauriという木の展望所だ。Kauriはニュージーランド北部に見られる木の種類で、まっすぐ上へ向かって幹を伸ばし、古い木では幹周りがとんでもなくでかくなる。早速ザルを出して、その堂々たるKauri木のそばからふるい始めると、記念すべき一匹目は中型のSagolaだった。さらに進めていくと、ヤシの木の根際から大型のアトキリアリヅカ、Physobryaxisを発見した。小一時間で小型の他の属も含めて10頭ほどたたき出して戻ろうとすると、Richがなにやら呼んでいる。朽木を割っているらしく、「お前も叩いてみろ」といっているらしい。渡された朽木を手で砕くと赤っぽい大型のアリが数頭出てきた。もしやと思ってふるいにかけてみると、1頭だけだが、Dalmodes myrmecophilus(未記載名)と呼ばれる大型の赤色のアリヅカが出た!これは好蟻性の種で、NZACで見て、採りたいと思っていたヤツだったので大喜び。さらにたたいて、いくつかのEuplectopsisも追加した。

 さらに車を進めて別ポイントに移ったが、えらく乾燥しており、アリヅカは一頭のみ。Richもふるわず、Tairuaへ下りることにする。途中Twin Kauriの入り口に立ち寄ってサンプルを持ち帰る。道のそばからBrounのタイプ産地となっているTairuaの展望を写真に収めた。Tairuaを通り過ぎ、Thamesへ戻ってスーパーで買出し。。夕食はRichが宿のキッチンで羊肉のシチューを作ってくれたが、肉の味がしっかり出ていて美味かった。食事後土を振るうが、存外に時間がかかり、2時就寝。




Left above: our seaside hotel in seaside near Thames; right above: habitat of "Dalmodes myrmecophilus" at Square Kauri, Coromandel Range;
left below: a view of Tairua; right below: collecting site near Tairua.

Hidden photo 1: "Dalmodes myrmecophilus", male & female; 2: three camiarine species (Leiodidae).


 今日は26号線を南下しKaimai Rangeでポイントを探す。まずはWaihi Beachのホテルへチェックイン。南へ程近いLindemann Roadという道を詰めて高台にある展望所に出た。ここで奥に入る道は3つに分かれていた。まず右手へ入ってみる。道端の枯れ木からヒラタカメムシを大量に採ったが、アリヅカはなし。やたらと細長いSalpingidaeも採集。沢に沿って林の中に入り、ふるっていくとやがて、Hamotulusらしきアリヅカをゲット。付近で20頭くらいは採ったが、まだかなりさびしい。奥へ詰めたところの土でカギムシをふるいだして、写真も撮る。

 Richが別の道がいいというので、ゲートをくぐって左の道へ入っていく。ここもやや鬱閉しているが、なかなかいい感じ。杉のような針葉樹の大木があって、そのリターは独特の虫がいるのだとRichが言う。ふるってみると、早速それまで採れていなかったEupinesが出てきた。Dalmaらしきものも出てきたので勇んでふるう。ここで夕方までやることにして、ずいぶん数も稼いだ。シフターでふるって土を取ったり、ザルでふるいだしたSagolaの写真も撮る。さらにホテルへ戻って夕食後、11時までかかって採った土をソートした。

 翌5日土曜日はカイマイ南部を攻める。曇り空だが雨の降る気配はなく、晴れ間も見える。Taurangoという町から山脈を横切る峠へ登り、左手に入るOld Kaimai Roadという道を見つけて入り込んだ。このあたりの林は背が低いが、よく茂っている。道はすぐに川を渡っていたが、その手前で少しふるうとPhysobryaxisが少し採れた。川をわたって少し上ると道は斜面を登っていく。奥の林ではEupinesがそこそこ出たが、種数は増えず。いったん川の手前へ戻った。低いがけに沿ってシダの落葉をふるうと、数は多くないがこれまで採れていなかったのが続々採れだした。昨日も採ったHamotulusらしきものや、Euplectitaeの小型種もたくさん出てきた。Pselaphogeniusらしきものも出てきたので勇んでふるう。Richが戻ってきたところで、ランチということになり、終了。

 昼食後、さらに車を走らせ、2時半ごろ次の目的地、山頂に鉄塔のあるTe Aroha山に到着。trackを見つけ出し森の中へ入っていくが、林が暗すぎて虫が見えない。結局少し採っただけで引き返す。車道のそばのシダの枯葉にもいないことはないが、数が少なくぱっとしない。5時になり作業終了。帰路雨が降り出した。7時ごろRich宅へ到着。ここで車に積んでいたと思っていたビーティングネットと長竿がないことに気づき愕然とする。たぶん初日の採集ポイントで置き忘れたものと思われた。好事魔多し。




Left above: Rich & Nomura at Lindemann Lookout, Kaimai Range; right above: Onichophora;
left below: Sagola sp.; right below: collecting site in Kaimai Range.

Hidden photo : Dalma sp. (left) & Zelandius sp. (right).


 6日日曜日。昨晩はガイ・フォックスデーとやらで、遅くまでRich家の周りでは花火が上がっていた。朝食を食べた後、9時過ぎごろから、Richがオークランド近郊のWaitakere Rangeへ採集に連れて行ってくれた。あいにくの雨だが、小降りでなんとか採集できそうな感じ。Arataki Visitor Centreというところでこの地域の動物や地理を見る。ウェタや緑色のヤモリが生体展示してあった。

 小雨の中、近くの山へ移動してtrack沿いに採集。木生シダの下生えは落ち葉がしっとりと湿っていい感じだが、実はこれが食わせ物で、いくらふるってもアリヅカが出ない。場所を変えてやるが、そこでもダメなので、シダじゃないのがよいのかと思ってヤシの落ち葉をふるうと1頭出た。これは後で見たら何と固有属のZeatyrus lawsoniだった。さらにRichがヤシの葉柄にたまった落ち葉から2頭出してくれた。それで作戦を変更し、ヤシの落ち葉をシフターでふるって持ち帰ることにした。一袋とって時間になったので車に戻る。

 帰る途中、スーパーに立ち寄って買い物。帰ってリターをふるうと、Eupinesなどがちょこちょこ出てきた。さらにふるって何と40頭以上。現場での収穫(4匹)とぜんぜん違う。Pselaphus2種を含んでおり、結構いい採集になった。夕食はRichがバーベキューを焼いてくれた。




Left above: a view from Arataki Visitor Centre in Waitakere Range; right above: Maori's carving;
left below: collecting site in Waitakere Range; right below: BBQ by Rich.

Hidden photo: Zeatyrus lawsoni (left) & Pselaphogenius? sp.


 翌7日月曜日、今にも雨が降り出しそうなオークランドを発ち、クライストチャーチへ。南島上空にさしかかった頃、雪をかぶった美しい中央山脈が姿を表し、採集意欲をそそる。南へ下るほど雲がなくなり、クライストチャーチは快晴だった。黒い小型車を借り、アーサーズパスへ向かう。だんだんと雪山が近くなり、峠道へと入っていく。晴天で山の姿が美しく、途中何度も止まってもらって、写真を撮る。谷を埋め尽くす黄色いエニシダ?の花はヨーロッパからの移入種だそうだが、相当山奥まで入っており、侵食力の強さを誇っていた。

 3時ごろ山小屋のような感じのホテルへ到着。庭にモアの模型が立っている。早速道具をそろえて、宿から程近いKlondyke Corner(標高550m)というあたりでまず採集。ここはナンキョクブナの美しい林のへりで、片方草原、片方林の願ってもないロケーションだ。まずはここにFIT3基ずつをセット。設置し終えたころには4時を回っていたが、ここは緯度が高くまだ日が高いので、それから30分ほど土を取ることができた。さらに次の地点へ移動。2番目のポイントはBealey Valley Trackという場所で標高800m。背の低いナンキョクブナの林で、地面から木の肌までコケに被われていた。勇んでふるうも、わずかにEuplectopsisなど2,3頭。土取りに切り替えてふるう。こちらはやや落ち葉のきめが粗く、湿った感じ。コケが地面を覆いつくしているので、土が採りにくく難しい。6時45分ごろ終了。

 夕食後部屋へ戻り、持ち帰った土を黙々とふるうと、結構そこそこの数が出てくる。最初の場所の土からはEuplectopsisのほかにPselaphusも相当出た。Richがふるいだしてくれた1個はHamotulus、第2地点からはRichお目当てのデオキノコが2個出たほか、Sagolaなども多かった。Richは10時ごろ大いびきで寝たが、こちらは1時近くまでかかった。寝る前そっと外へ出てみると降るような星空。マゼラン星雲がビカビカ。




Left above: a view of Southern Alps from an aircraft; right above: a beach forest in Arthur's Pass;
left below: a moss forest in Arthur's Pass; right below: inside of the moss forest.

Hidden photo: Euplectopsis sp. (left) & Eupines sp.(right).


 Arthur’s Pass の朝はさわやかな快晴。気温もだいぶ下がったようだ。チェックアウトを済ませ、山々をバックにモアと記念写真。町を通り過ぎ、峠の頂上へ。頂上は850m程だが、森林限界を超えて高山の雰囲気が漂っている。白い花の高山植物が咲く茂みの中のtrackへ入ってゆく。Richは岩についたコケをはがして、岩の面を探してアリヅカを採っている。こちらはなかなか調子が出ず、やっと湿原のそばで真っ黒のEupinesをゲット。その間にもRichは着々とアリヅカを稼いで行き、10頭以上採ってくれた。

 峠を降りると深い谷が続き、それもだんだん低くなり、平野に出る。そのあたりでRichは左手の林に入って行き、ある種のデオキノコを採りたいというので付き合う。Caucayne’s trackという所で、木は茂っているが樹高が低く、リターは豊富。ふるうとSagolaが出てきたので、腰をすえてふるうが余り数は出ない。時間がないのでその場で土だけを取った。

 さらに走って3番目の場所はTaipo Valley trackという道を2kmほど入っていったところ。小さな草地に車を止めて、まずはFITを設置、1時間以上かかった。車に戻るとRichは車のバンパーの上でソーティング中。林道の脇の落ち葉をふるうが、湿りすぎていてノーグッド。道を下った斜面の上り口付近でふるうとPselaphusが出た。続けてふるうとそこそこ10頭以上出たので、土も取って4時半ごろ帰途につく。




Left above: Moa & Nomura; right above: Jack's Hut (800m alt.) at Arthur's Pass;
left below: trapping and collecting site at Taipo Valley Track nr. Arthur's Pass; right below: Pselaphogenius? sp.

Hidden photo 1: Sagola bilobata (left), Hamotulus robustus (middle) & unidentified genus of Omaliinae.


 Hokitikaへの道は単純だが、途中、線路と共用の橋があったりして面白い。ホテルはRichの好きな浜辺のロケーション。夕食後浜辺へ出ると、すばらしい日没。夜になって近くのグローワームの名所へ見物に行く。暗闇にかすかな光が星のようにきらめき、幻想的。

 翌朝もすばらしい天気。サザンアルプスの山々が美しく輝いている。しかしRichにとっては最悪の出だし。その1:夜中に腹を出して寝たらしく、風邪を引いて気分が悪い。足もなんか痛い。その2:学生時代から愛用していたウェストポーチの留め金を車のドアに挟んで壊した。その3:山の写真を撮るスポットを探している途中、ポリにスピード違反を見つかり切符を切られた。しょげるRichをなだめながら最初の採集地へ。最初のスポットはマヒナプア湖という美しい湖のほとりで、再生林だが、よく茂った暗い林だった。入り口すぐの落ち葉をふるうとEupinesがたくさん出た。つづいてSagolaやEuplectopsisも。奥へ移動するとさらによい場所があり、Pselaphusなども追加した。昼食後もここで粘り、合計100頭をたたき出し、土も採った。すこぶる満足の内容。

 2番目のスポットへ移動する。Totara Forestという保護区を横切る林道を、相当な距離走った場所だ。川の斜面をトラバースする道沿いで採集。急斜面を水が大量に滴り落ちていて、土をふるうには湿りすぎていた。それでもしつこく叩いて、やっと20頭ほど。但しほとんどがEupines。ふと、いい感じの樹幹のコケをはがしてみると、EupinesとHamotulusが出てきたので、残りの時間をそこにかけることにしてコケをはがす。いいところばかりでもなかったが、短い時間で10頭。5時半になったので急いで戻る。




Left above: a view of Lake Mahinapua; right above: very good collecting site nr. Lake Mahinapua;
left below: entrance of Mikonui Track in Totara Forest; right below: Hamotulus spinipes collected from tree moss at Mikonui Tk.

Hidden photo: undescribed genus of Omaliinae (left), Exeirarthra enigma? (middle) & Eupines rudicornis? (right).


 翌朝は昨日よりやや雲の多い天気。浜辺へ出てCleroideaの小甲虫を探すと、砂浜に落ちていた動物の糞の周りにいくつか見つかったので、写真を撮って採集する。Greymouthの街でRichの知り合いのPoleさんを訪ね、採集場所の情報を聞いた。彼が教えてくれた採集地は、住宅街からすぐのGrandjean’s Creek trackという道。入り口付近でふるうとすぐにEupinesが出たので、とりあえず20くらいかせいで次を探す。ほかの種は少なく物足りないが、とにかくイージーに数は稼げる。さらに林へ入り込んでSagolaやPselaphusなどをゲット。しかし南島では属の組み合わせが単純で変わり映えがしない。ランチにするべくRichを探していると、木の根元にマイタケのような巨大な半球状のキノコを発見した。あまりにも見事でまず写真を撮る。そこへRichが現れ、二人で下のほうから少しずつ崩して虫を採る。ヒゲブトハネカクシとケシキスイなど。次のポイントへ向かう途中、海岸を見下ろす道路脇の展望所でランチブレイク。海も山もすばらしいパノラマ。

 さらに進んでBerrytownという町の手前から山手へ入るCroesus trackという道を登る。ふるうとすぐに見つかったがEupinesばかり。ここは先の林よりさらに単純な様相で、やたらと木性シダが多い。帰り道、腰にいやな痛みが走る。ぎっくり腰の軽いやつで疲れると出る。長時間座りっぱなしでソーティングなんかしていたのと、長時間ドライブのせいであろう。時折襲ってくる痛みに顔をしかめながらホテルへ戻った。




Left above: a beech nr. Hokitika; right above: Phycosecis limbatus of the endemic family Phycosecidae;
left below: collecting site of Grandjean's Track nr. Greymouth; right below: large mushroom found at Grandjean's Tk.

Hidden photo 1: from the left, Phycosecis limbatus (Phycosecidae), Diagrypnodes wakefieldi (Salpingidae) and Priasilpha obscura (Phloeostichidae);
2: unidentified genus of Omaliinae (left) & Pselaphogenius? sp.


 翌朝はどんよりと曇り。時折小雨の降る天気で採集が案じられた。今日はPoleさんも付き合ってくれる。Poleさんは大変いい人だが、英語が聞き取れない。ニュージーなまりなのか。まずはTaipo forestへ向かってFITの回収。雨のせいか収穫物は少なかった。Greymouthまで戻り、Paparoa山地へ。途中のPunakaikiという景勝地を見物し、その先から山手へ入る。ダートを6キロほど走って牧場のような場所へ出た。そこからは歩き。道はマオウのような針葉樹?の林を過ぎて、重厚なナンキョクブナの林へ入ってゆく。このあたりで大きなムカシヤンマに出会った。でかいが動きはのろい。林に入ってブナの落ち葉をふるうが、なかなか出ず、やっと溝にたまったようなリターをふるってEupines。とりあえず数を稼ぐ。Eupinesに混じってPselaphusや、大型のEuplectopsisみたいのや小型種も。30ほど稼いだところでほかへ移ってふるってみるが不発。さっきの溝で土を採って戻る。2人もそこそこの採集をしているようだった。車へ戻る途中、変わった模様のアカタテハの写真を撮った。




Left above: a seaside view of Pancake Rock at Punakaiki; right above: entrance of Bullock Creek Road in Paparoa Range;
left below: a large primitive dragonfly; right below: a beach forest at Bullock Ck. Rd.

Hidden photo: Cerambycids (left 2) and Curculionid (right) collected from leaf litter.

 11月12日土曜日。朝は激しい雨。雨音の中でRichとゴソゴソと帰り支度。GreyのGreymouthを抜けて大きな湖を回りこむ道へ。やはり雨模様だとせっかくの大自然も浮かない雰囲気だ。73号線に合流してArthur’s Passを登る。やがてFITポイントへ到着、回収にかかる。Richに手伝ってもらって、1時間ほどで回収し終えた。雨も小降りになり、少々陽も差してきた。近くのシェルターで荷物をまとめようとすると、2羽のキア(大型のオウム)がこちらを見ている。十分に写真を撮って峠を下る。Christchurchには1時間半ほど前のビミョーな時間についた。車を返し、チェックインした後、近くにあるAntarctic Museumを見学しようとするが、展示を見る時間はなく、Museum shopで買い物をしただけだった。オークランド着は6時前ごろ。Rich宅の夕食は中東風のカレーでラム肉を使ってすこぶる美味だった。食後、留守中にRich家に付いたというインターネットを見たり、南島で撮った写真をスライドショーで見たりした。



Left: two big parrots, "Kia"; right: a view of Christchurch from an aircraft.
Hidden photo: from the left, Zeanecrophilus prolongatus (Agyrtidae) and Ceratognathus sp. (Lucanidae) collected by FIT,
Liochoria huttoni (Byrrhidae) collected from moss.


 翌朝、空港で礼を言ってRichとお別れ。ところがここからが災難の連続だった。まずチェックインでエクセスを265NZDもとられ憤激。買物の後、早めに出国ゲートに入ったつもりだったが、なんと日本からの修学旅行の高校生の群れの後についてしまった。行列に散々並んだ挙句、空港税25NZDを払っていないということでとめられ、はじめからやり直し。セキュリティーチェックもそこそこに、急いでゲートへ向かうと、日本人客であふれかえっており、座る場所もない。10分ほど待って搭乗。やっと人心地ついた。10時前テイクオフ。NZは自然と人はすばらしく素敵な国だ。白ワインとラム肉もとびきり旨い。今回、採集のコツがやっと少しつかめたようなので、是非また採集メインで訪れたいものだ。

 謝辞.ニュージーランド訪問の全般にわたり、懇切に案内くださり、数々のご助力を賜ったLandcare Research (Auckland), New Zealand Arthropod CollectionのRichard A. B. Leschen博士に厚く感謝の意を表する。また、ニュージーランドの甲虫相や現地の状況についてご教示を賜った、上野俊一、森本桂、大原昌宏の諸先生方にも感謝の意を表したい。


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