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隕石の分類について 

隕石は「始原的な隕石」と「分化した隕石」とに大きく2種類に分けることができます。「始原的な隕石」は全体が融けた形跡のない、46億年前に太陽系ができた頃の物質をそのまま集めたものと考えられます。これに対して「分化した隕石」は一度全体が融け、化学的な分別を受けた隕石です。このうち多くは、太陽系ができてからすぐ(1000万年以内)に融けたと考えられています。
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始原的な隕石
アエンデ マラリンガ

アエンデ隕石(球粒隕石)

球粒の顕微鏡写真

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 「始原的な隕石」はすべて「球粒隕石」(chondrite;コンドライト)です。球粒隕石は落下する隕石の大多数、87パーセントを占める岩石質の隕石です。「球粒」(chondrule;コンドルール)と呼ばれる直径数ミリメートルの丸い粒がたくさん入っている事から、そう名付けられました。球粒と球粒の間は非常に細かい鉱物の結晶で埋められています。多くはここに鉄とニッケルを主成分とする金属を含むので、球粒隕石のほとんどは磁石にくっつきます。

 球粒隕石は鉄や金属の含有量などにしたがって、いくつかの化学的グループに分類されます。金属をほとんど含まず、炭素や水といった揮発性の成分を多く含むものは炭素質球粒隕石(carbonaceous chondrite:Cグループ)。反対に金属を多く含むものは、頑火輝石球粒隕石(enstatite chondrite:Eグループ)。実はどちらの隕石も元素としての鉄は20〜30パーセント含んでいます。しかしEグループはすべての鉄が金属なのに対し、Cグループではほとんどの鉄が酸化物として鉱物の中に入っているのです。

 これらの中間にあたるのが、金属の多い方からH、L、LLと呼ばれる3つのグループです。Hは鉄が多い(high total iron)、Lは鉄が少ない(low total iron)、LLは鉄も金属も少ない(low total iron, low metal)という意味です。Hは球粒隕石の < 続く>

< 続き >  39パーセント、Lは44パーセント、LLは9パーセントと最もよく落下する隕石のため、3グループをまとめて普通球粒隕石(ordinary chondrite)と呼ぶことがあります。これに対してCグループは5パーセント、Eグループはたった2パーセントという大変珍しい種類の球粒隕石です(残りの1パーセントはいくつかの珍しい隕石と分類が2つ以上にまたがる隕石)。日本には神戸隕石を含めて41件の球粒隕石が知られていますが、Cグループは神戸隕石が初めて、Eグループは1906年に長野県に落下した木島隕石だけです。

 球粒隕石は化学的グループによる分類に加え、球粒がはっきり見られるかどうか等の特徴で、さらに岩石学的タイプと呼ばれる1〜7の数字が付けられます。1と2はCグループのみに使われる特別な番号ですが、3〜7は他のグループでも使用されます。球粒の形が判別しにくくなるにしたがって、大きな数字が付けられます。これは隕石に融けるほどではありませんが、熱や圧力が加わって徐々に変成していったためと考えられています。これらの理由から岩石学的タイプは“熱変成度”とも呼ばれています。

 球粒隕石の分類は、前述の化学的グループと岩石学的タイプを組み合わせて、H5、L6…というように表します。中でもC1は球粒が見られず、水分を20パーセント、炭素を3パーセントも含んでいるという特別な隕石で、その組成は、太陽系ができた当時のままに保たれています。このため最も始原的な隕石であると言われていますが、世界でまだ10個も見つかっていません。また、他のCグループの隕石も、太陽系ができた時代の様子を探る貴重な資料として盛んに研究がなされています。そのため最近はさらに細かな分類が行われ、代表的な隕石の名前のイニシャルをCの後ろに付けた、CI、CM、CO、CV、CK…といった分類名を使うようになっています。

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分化した隕石

 「分化した隕石」は、岩石質の「無球粒隕石」(achondrite)、鉄とニッケルを主成分とする金属でできた「鉄隕石(隕鉄)」(iron meteorite)、金属と岩石質の部分が半分ずつある「石鉄隕石」(stony-iron meteorite)の3種類に大きく分けられます。
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 ■ 無球粒隕石


 無球粒隕石は球粒隕石と同じく岩石質の隕石です。両者を合わせて石質隕石(stony meteorite)と呼びますが、無球粒隕石ではその名の通り、球粒が見られません。無球粒隕石も元は球粒隕石のような物質が集まってできたと考えられていますが、全体がいったん融けたため、球粒の形が見えなくなるとともに、化学組成も分別を受けて変化してしまいました。地球の岩石と同様に融けたマグマからできたため、地球の岩石とほとんど見分けがつかないものもあります。落下してくる割合は隕石全体の8パーセントですが、日本ではまだ確認されていません。

 無球粒隕石は化学組成や岩石学的特徴から、さらにいくつかの種類に分類されます。落下する無球粒隕石の70パーセントを占めているのがHEDグループです。これはホワルダイト(howardite)、ユークライト(eucrite)、ダイオジェナイト(diogenite)という3種類の隕石グループの頭文字をとって付けられた名前です。これらの隕石の起源が同じであることが分かり、ひとつのグループにまとめられました。最近、小惑星の反射スペクルの研究により、このグループが小惑星べスタ(直径約500km)から来た、あるいは少なくとも関係があると言われています。

 次に多いのがEグループの球粒隕石と関係があると言われているオーブライト(aubrite)や衝突のショックでできたダイヤモンドが見つかっているユレイライト(ureilite)です。この他に、アングライト(angrite)や始原的無球粒隕石(primitive achondrite)と呼ばれるグループもあります。また、火星から来たと推測されているSNCグループと呼ばれる隕石や、月から来たことが明らかな月隕石も無球粒隕石に含まれます。これらはそれぞれ十数個ずつしか見つかっていないとても珍しい隕石です。この2種類以外の隕石は、球粒隕石等も含めてすべて小惑星帯(火星と木星の間)から来たと考えられています。 

■ 石鉄隕石
 石鉄隕石は、金属部分と岩石質部分が半分ずつ混じりあう隕石です。岩石質部分がほぼカンラン石という鉱物だけでできたパラサイト(pallasite)、様々な鉱物が入っているメソシデライト(mesosiderite)の2種類が知られています。石鉄隕石は、金属でできた核とそれを囲む岩石質のマントルとの境目の部分であると考えられています。あるいは、金属の中に比較的重いカンラン石が押し込まれ、核自体がパラサイトのようになっている場合があるとも考えられています。落下してくる割合は隕石全体のわずか1パーセントあまりですが、日本では1898年、高知県にパラサイトである「在所隕石」が落下しました。落下が目撃されたパラサイトは、世界中で4件しかありません。

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 ■ 鉄隕石


 鉄隕石は鉄とニッケルを主成分とする金属の塊です。球粒隕石には多いもので金属が30パーセントほど含まれていますが、球粒隕石が融けると金属は重い(比重が大きい)ため下の方に集まります。こうして大量の金属が集まり固まったものが鉄隕石です。地球の核(コア)も同じようにしてできたと考えられるので、まだ誰も見たことがありませんが、鉄隕石のような物質でできているかもしれません。落下してくる割合は隕石全体の4パーセントと少ないのですが、割れにくく地表の岩石とは全く違うため、昔に落下したものが発見されやすくなります。そのため、知られている隕石全体での割合は高くなっています。日本では8件の鉄隕石が確認されていますが、落下が目撃されたものはそのうち3件だけです。

 鉄隕石の表面を磨き、薄い酸で溶かすと、きれいな筋模様の出るものがあります。発見者の名をとって“ウィドマンシュテッテン構造”と呼ばれていますが、これは鉄とニッケルの含有量が違う2つの相が鉄隕石の中に存在し、ニッケルの多い部分が酸に溶けにくいために起こる現象です。この2つの相ができるには、100万年に数度〜数百度という非常にゆっくりした速度で隕石が冷えなくてはなりません。したがって、この模様を人工的に作ることは不可能なのです。

 鉄隕石は、この筋模様が見えるか、筋の幅はどれくらいかということで、分類されてきました。全体のニッケルの含有量が6パーセント以下程度だと、相が1つだけになり、模様がでません。この種類をヘキサヘドライト(hexahedrite)と呼びます。ニッケルを6〜20パーセント程度含んでいて模様ができるものを、オクタヘドライト(octahedrite)と呼びます。ニッケルが多くなるにつれて筋の幅が狭くなるので、粗・中・細(coarse, medium, fine)といった言葉をつけて分けています。ニッケルがさらに多くなると、筋が細かくなりすぎて模様が分からなくなります。これをアタキサイト(ataxite)と呼びます。

 しかし最近は、ニッケル含有量と微量元素の化学組成から成因が関係する化学的グループに分けることが一般的になりました。微量元素(例えばガリウムやゲルマニウム)の含有量の多い方から少ない方へI〜IVという数字を付け、さらに細かな特徴でA、B、Cなどの記号を付けます。この結果、鉄隕石は、IA、IIDというような十数個程度のグループに分けられています。

ナクラ
玖珂
ナクラ隕石
(無球粒隕石)
.玖珂隕石
(鉄隕石)
エスクエル
エスクエル隕石
(石鉄隕石)

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◆隕石についてもっと詳しく知りたい方へ以下のような書物が出版されています。

 『隕石 宇宙からの贈りもの』島正子 著 (東京化学同人/1998年)
 『隕石 宇宙からのタイムカプセル』F.ハイデ、F.ヴロツカ 著
           (シュプリンガー・フェアラーク東京/1996年)

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米田成一
国立科学博物館理工学研究部
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