日本の桜





 

一口に桜と云っても後に述べるように多種多様である。毎年春になると”桜の開花予想”や”桜前線”がテレビや新聞などに登場する。対象となっている桜は”ソメイヨシノ”と呼ばれる栽培品種で、今ではほぼ全国的に行き渡り、公園や川沿いなどで栽培されている。満開時の樹下でのお花見は今や全国民的行事とさえ云えるほどになっている。
 日本の野生の桜はヤマザクラ、オオヤマザクラ、オオシマザクラ、カスミザクラ、エドヒガン、マメザクラ、タカネザクラ、チョウジザクラ、ミヤマザクラの9種でしかないが、それらから選出された栽培の桜は数え切れないほど多い。ソメイヨシノもその一つと考えられている。また、栽培品種の中には名木として手厚く保護されているものもある。
 桜は多数の雄しべを持ち、子房が萼筒でかこまれるなどの特徴からバラ科植物とされ、ウメやモモ、アンズ等を含めた400種を越えるサクラ属に分類されている。上に述べた野生の桜はサクラ属の中でも果実の側面に縦溝がなく、果実の表面にロウ質白粉がないなどの特徴でまとめられるサクラ亜属に分類されている。サクラ亜属の野生種は欧州、中国、北米などで約50数えられているが、日本ほど栽培品種の多い国は他にない。
なお、これは当館植物研究部に収蔵されている「おしば標本」を用いて行っている研究成果の一部を公表したものです。



ヤマザクラ Prunus jamasakura Sieb. et Zucc.
オオヤマザクラ Prunus sargentii Rehd.
オオシマザクラ Prunus lannesiana (Carr.) Wilson var. speciosa (Koidz.) Makino
カスミザクラ Prunus verecunda (Koidz.) Koehne
エドヒガン Prunus pendula Maxim. f. ascendens (Makino) Ohwi
マメザクラ Prunus incisa Thunb. ex Murray
キンキマメザクラ Prunus incisa Thunnb. ex Murray var. kinkiensis (Koidz.) Ohwi
タカネザクラ Prunus nipponica Matsumura
チョウジザクラ Prunus apetala (Sieb. et Zucc.) Franch. et Sav.
オクチョウジザクラ Prunus apetala (Sieb. et Zucc.) Franch. et Sav.var. pilosa (Koidz.) Wilson
ミヤマザクラ Prunus maximowiczii Rupr.


[ 植物研究部 ]