
研究室コラム・更新履歴
- 科博のチョウコレクションの原点を見なおす

- 林慶氏のコレクションより、ミヤマモンキチョウ。日本では本州中部の高標高地に分布する。
専門家が博物館に託した標本コレクションは、博物館の研究や展示などで重要な役割を担っています。当館の日本産チョウ類コレクションの基盤となったのは、戦後のチョウ研究を切り拓いた林慶氏(1914年〜1962年)のコレクションです。林氏は在野の研究者として、第二次世界大戦後初めてのチョウ図鑑である「日本蝶類解説」(1951年)、チョウの幼生期を詳細に記述した「日本幼虫図鑑」(1959年、分担執筆)を出版するなど、チョウ研究に多大な貢献をされました。林氏の死後、1万個体を大きく超えるチョウ標本コレクションが、ご遺族によって1973年に当館へ寄贈されました。当時は研究者が手書きの台帳やリストで標本の情報を整理しましたが、半世紀を経た今、私の研究室ではそのデータベース化を進めています。コレクションには、すでに姿を消した地域のチョウも多く含まれ、解析を通じて当時の自然や林氏の足跡を新たに知ることを楽しみにしています。
(動物研究部:神保宇嗣)