研究室コラム・更新履歴

4月27日

科博と発生生物学
写真:バフンウニの受精。右写真は、左写真の赤枠内を拡大したもの(丸囲みは卵に進入中の精子)。卵の直径は0.1mm程度。

この春の科博を語るキーワードの一つは「発生生物学」です。開催中の企画展「卵からはじまる形づくり」(〜6月11日)や3月発行の『milsil(ミルシル)56号』の特集は、この学問分野の「今」を紹介したものです。特に高校生や大学生、そして生物を教える教師の皆さんには、この分野をより深く知る絶好の機会となるでしょう。発生生物学が私自身の研究生活の原点であり、現在進めている自然史研究に欠かせない分野でもあることから、これらに関わっています。「発生生物学」が、生物の進化を語る上でも重要な分野のため、今後も科博を語るキーワードであり続けるように力を尽くしたいと思っています。
(動物研究部:並河 洋)

4月20日

展示中の珪藻化石が新種として
記載されました!
写真:アクツイの走査型電子顕微鏡写真

地球館地下2階に、縞縞の地層(塩原湖成層)とそこに含まれる珪藻Stephanodiscus sp.が展示されています。塩原湖成層は、今から30万年前ごろ塩原温泉の辺りにあった湖の底にたまった地層で、温泉街を流れる箒川わきの崖などで観察できます。木の葉や昆虫などの化石が見つかることで有名で、珪藻化石については宇都宮大学で教鞭を執られた故阿久津純博士によって1960年代にその概要が報告されていました。昨年、茨城大学と国立科学博物館の共同研究で、もっともたくさん産出する珪藻種が新種であることが分かり、
Stephanodiscus akutsui(アクツイ)として公表されました(参考)。展示中の珪藻に、ようやく名前がつきました。
(地学研究部:齋藤めぐみ)

4月13日

ヒメオニヤブソテツとムニンオニヤブソテツ
写真キャプション:Thunberg(ツンベルク)が長崎で採集したオニヤブソテツのタイプ標本(ウプサラ大学所蔵)。同大学との二国間事業の際、この標本の胞子を検討できたことが、今回の亜種正式記載を後押しした。

オニヤブソテツは、海岸から山地、都市部まで幅広い環境に見られるシダ植物です。松本定名誉研究員の研究の結果、この種の中には生育する環境や倍数性が異なる複数の系統が含まれることが明らかになり、それらは「ヒメオニヤブソテツ」「ムニンオニヤブソテツ」「ナガバヤブソテツ」と呼ばれるようになりました。このうち前2者は学名が正式につけられていない状態でしたが、このたび新亜種としての正式な記載が行われ、20数年の時を経てようやく「一人前」になりました。[Ebihara et al. (2017). 国立科学博物館研究報告B類:植物学 43(1): 19-25] 私たちがよく知っている生物の種でも、訳あって正式な学名を持っていないものが、意外とまだあったりします。
(植物研究部:海老原 淳)

4月6日

高山で越冬する鳥ライチョウ
2月末に、鳥の越冬地調査で長野県の白馬乗鞍岳へ出かけました。高山で繁殖する鳥は何種類かいますが、冬の間も高山で過ごすのはライチョウだけです。標高2,000m前後の亜高山帯のダケカンバ林とオオシラビソ林が接する場所に、数羽の群れがいました。10mほど近づいても気にする様子もなく、ダケカンバの冬芽をついばんだり、雪に半分埋もれて休んだりしていました。高山は地球温暖化に脆弱な生態系とされますが、何とか生き延びてほしいものです。
(動物研究部:西海 功)