研究室コラム・更新履歴

8月17日

矢田部良吉とその資料
画像:矢田部良吉の自筆履歴書(明治21年頃)

矢田部良吉という人がいた。幕末の生まれで、明治に入ってすぐアメリカに留学し、帰国後に日本初の植物学教授となった。当館の前身である「教育博物館」の初代館長なども務めている。
矢田部の遺したノートや日記、原稿などは、親族の方から当館に寄贈され、筑波の収蔵施設にある。その整理・調査からは、激動の時代を駆けた科学者の実像が浮かび上がってきた。来年は明治150年。矢田部なら、何を思うだろうか。
(理工学研究部:有賀暢迪)

8月10日

チバニアンと梅雨の悩み
ニュースでも話題となりましたが、約70〜80万年前の千葉の地層が国際的な地層の時代を決める模式地として認定されるべく審査が始まりました。イタリアの2カ所と、千葉の3つの候補地から選ばれることになります。
私たちの研究室では、この千葉の地層に詳細な時代を入れるという仕事を担当しました。地層から見つかる有孔虫という小さな化石を質量分析計にかけ、その殻に含まれる酸素原子のちょっとした重さの違い(酸素同位体比という)を明らかにします。酸素同位体比は、時代によって変動するため、世界的な標準カーブと比べることで時代を決められるのです。0.1mmほどの小さな化石ですが、重要な手がかりを残してくれます。
質量分析計では、液体窒素を使って−200℃近くまで冷やしますが、湿気が多いと霜がつき機械に不具合がおきます。機械が壊れないかハラハラした梅雨もようやく明けました。
(地学研究部:久保田好美)

8月3日

熱帯性地衣類のアミモジゴケ
筑波実験植物園には、熱帯〜暖温帯に見られる地衣類のアミモジゴケが自生しています。発見したときは「なぜつくばに?!」と驚きました。熱帯性地衣類の日本での分布は年平均気温約15℃の等温線が北限であるとされていますが、つくばではその温度にほぼ到達する年が増えています。一方、2003年のディーゼル車規制以降、大気汚染が劇的に改善し、都市部が暖かい地域の種にとっても生育しやすい環境になってきたのかもしれません。
発表論文(英文)アミモジゴケは温暖化やヒートアイランドの指標となるか?
(植物研究部:大村嘉人)

7月27日

特別展「深海2017」始まる
「日本周辺の深海生物相」の展示

特別展「深海2017」が7月11日から始まりました(〜10月1日)。深海をテーマにした特別展は2013年に続き、2回目となります。今回の展示の見所は美しい生物発光の映像や巨大な深海ザメの液浸標本、超深海の生物といったところでしょうか。私の一押しは超深海の巨大ヨコエビ「ダイダラボッチ」です。巨大なオンデンザメに圧倒されて見逃さないようにご注意ください。また、少し地味に映るかもしれませんが、「日本周辺の深海生物相」は当館の長年の深海生物相調査の結晶となります。延べ21年にわたる地道な深海調査とそこで採集された標本をベースに、今回の展示が成り立っているのです。
(動物研究部:小松浩典)

7月20日

植物園から保全を考える
写真:植物園バックヤードにて、植え替え後の様子

先日、ユリ科の絶滅危惧種であるコバイモ類の1種について、種子と小球を譲り受け、筑波実験植物園バックヤードでの栽培を開始しました。コバイモ類は8種が知られており、いずれも日本の固有種です。近年では、森林伐採や採取が原因で、自生地が減少しています。絶滅危惧種を維持・管理していくことは植物園の持つ大きな役割の一つです。絶滅の危機に瀕する種に触れ、その生きざまを理解することは、多様で豊かな地球を次世代に残すことに繋がる一歩です。来春、元気に芽を出してくれることを楽しみにしています。
(植物研究部:水野貴行)

7月13日

重い軽石
特別展「深海2017」(〜10月1日)が始まりましたので、私イチ押しの展示標本を紹介したいと思います。それは巨大な軽石。ニュージーランド北東沖にある海底火山が2012年に噴火した際に放出されたものです。その後、無人探査機を使った海底調査で2 m近い軽石を採集することに成功しました。巨大軽石は重さ200 kg以上あり、船上に揚げた途端に自重で2つに割れてしまいました。海底は一面この巨大軽石で覆われており、噴火の脅威を実感しました。今回はその片割れを海底映像とともに世界初公開します!
(地学研究部:谷 健一郎)

7月6日

フィールドでの標本作り
雨よけに近くの木で小屋を作って、キャンプ地に設置した標本乾燥フレーム(ミャンマー西部・タマンティー野生生物保護区)

昨年度より総合研究「ミャンマーを中心とする東南アジアの生物インベントリー」が始まり、様々な分類群を対象とする研究者が合同でフィールド調査を実施しています。中でも私の対象とする種子植物標本は乾燥させるのが大変です。標本を新聞紙に挟み、同じサイズに切った段ボール板で挟んで束ね、箱型のフレームの上に載せて、下からストーブで熱して乾かします。特にフレームは軽量化のため、厚さ1 mmのアルミ板でできており、運びやすいよう折りたたみ式で、フィールドで簡単に組み立てられるように設計し特注した物です。このように研究に使う「商売道具」を日々いろいろ工夫していますが、それを考えるのも楽しいものです。
(植物研究部:田中伸幸)